てんたぷ本文
□B
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あの人を初めてみたのは、17の時。
春の桜が舞い散る公園で、ポロポロ涙を流していた。
平日の11時。
遊んでいた親子もそろそろお昼ご飯だ、とぞろぞろ帰って行く。
そんな時間になんでこんな所に学生のオレが居るのかといえば、寝坊して途中まで足は学校へ向かっていたのだけど、桜の花びらに誘われてこの公園に来てしまった。
公園には、オレとあの人だけ。
普段なら知らない人が泣いていようが関係ないけど、なぜか気になって仕方がない…。
「あの、…大丈夫ですか?」
考えるよりも早く、身体が泣いているあの人の居るベンチに向かい、声をかけてしまっていた。
「……?」
こちらを向いたその人は、大きな目からポロポロ涙を零しながら、いきなり話しかけられた事に驚いているようだった。
「っ、…なに?」
目元を隠しながらゴシゴシと涙を擦って、
そう問われたけど自分もなんで話しかけたのかわからないんだ…。
「いや、…その、泣いてたみたいだから…」
「…ふふ、…学生さん?」
「高校生?」「学校は?」「さぼり?」って逆にどんどん質問されて、焦るばかり。
「オ、オレの事は、いいんです!」
「…大丈夫だよ」
本人はにっこり笑っているつもりなんだろうけど、悲しそうに笑わないで。と思った。
だから、咄嗟に抱きしめて悲しい顔を見えなくした。
「ちょ、っと…おい、こら!」
「そんな顔しないで下さい…」
オレまで泣きそうになる。
「…っ、…高校生が、ナマイキだ…」
「すいません」
「学校行けし…」
「明日から行きますから」
「ふ、…うっ…」
それからどの位経ったのかな?
オレは1時間とも2時間とも思えたけど。
あの人は、「ありがと」と頬っぺたにキスして泣きはらした顔で帰って行った。
ちょっとは、あの人の役にたてたかな?
帰る時のあの人は、もう悲しい笑顔じゃなかったけど…。
あれから、何回あの公園に時間をズラして行ってみてもあの人に逢う事はなかった。
*
「チャンジョ〜ボクの行きつけのカフェ行かない?」
「カフェ?行きつけだと?生意気だな」
「うるさ〜い!カフェのマスターがね、ニエルヒョンっていうんだけど、優しいの!今度お友だち連れておいで?って言ってたから、行こう!」
「客目当てじゃねぇの?面倒くさ〜」
チリン、チリン〜
「ヒョ〜ン!友だち連れて来たよ〜」
「リッキー、久しぶり」
「!!!!!!」
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