novel

□対照
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”今日お兄ちゃん東京から帰ってくるんだって!
あんた帰りにお寿司買ってきなさい。”

「ちっ、…珍しくメールよこしたと思ったら兄貴のことかよ」

朝倉隼人(あさくらはやと)は苛立ちをぶつけるように、母親からのメール画面のままになっているスマホを放り投げた。

そして、そのまま机に突っ伏す。


ここはオレがよくサボり場に使っている空き教室だ。
古い棟の端にあり、誰も来ないため都合がいい。

(だりぃーから午後は帰ろうと思ってたのに、兄貴が来るんじゃ家に帰りたくねぇ…)

ため息をつき、オレは昼寝をすることにした。








チャイムの音で目を覚ます。
ちょうど6現目が終わった時だった。

(寿司なんか誰が買って帰るか。今日は夜中まで帰らねぇぞ)

そう意気込み、ゲーセンにでも行こうと思ったとき、教室の扉が開いた。
開けたのは男子生徒だった。

「…会長」

同じクラスの生徒会長、佐川明寛(さがわあきひろ)だ。
少し長めの黒髪を片側だけ耳にかけ、反対側に流している。
端正な顔だちの男だ。


でも、仲が良いわけじゃない。
オレは兄のような優等生が嫌いだからだ。

「…何しに来たんだよ」

「君がよくここでサボってるって聞いて、注意しに来たんだよ」

なぜだか、コイツはこうやってよくオレにちょっかいをかけてくる。
他の生徒や教師はオレに関わろうともしないのに。


「はっ、大きなお世話だ。
とっとと帰れ」

オレはどちらかと言えば可愛い顔立ちをしているが、睨めばその辺の生徒はすくみ上がるほど迫力のある顔ができる。
その目で佐川を睨み付けた。

しかし、佐川は全く怯むことなくオレに近づいてくる。

「あんまりサボると留年するよ?
大人しく授業にでてほしいんだけど」

「お前には関係ねぇだろ!
オレはな、お前みたいないい子ちゃんは嫌いなんだよ」

言い捨てて、横を通り過ぎようとしたとき、腕を掴まれた。
すごい力でひねり上げられる。

「…っ、てめっ!」

「帰さないよ」

「っ!?」

勢いよく腕を引かれ、バランスを崩した体を突き飛ばされる。
無様に地面に倒れたオレの上に、会長が馬乗りになる。

「…いってぇ…!何すんだてめぇ!」

体を起こして殴りかかろうとした。
しかし、拳は佐川の大きな手によって握りこまれ、脚で腹を抑えられて身動きが取れなくなる。

(何だよコイツ…見かけより力強ぇ!)

オレは腕力があるほうじゃない。強味は素速さだ。
しかし、それも寝転がってしまえば効果を発揮できない。
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