恋人は不良転校生・哲U

□想念のコラージュ
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「…」

夜明け。

あたしの眠りは深かった。

昨晩、
落ちるように寝てしまい、平たくいえば、途中から記憶がない。

「…」

どうしてそうなったかといえば、それは、隣に眠る…江本晴夜のせいだ。

てゆうか、“隣”なんちゅうもんじゃあない。

長い手足の江本に抱き寄せられたまま爆睡しているということだ。

細身に見えて鍛えられている江本の胸板に頭をしっかり乗せ、
脇に挟まるように深く抱き合って寝ちゃったということだ。

更にいえば裸だ。

江本の肌は滑らかで私に吸い付こうとするようだ。

絹みたいに艶があって、光を吸い寄せるように美しい。

端正な顔立ち…だが、どこか癖のある風貌…
一度会ったら決して忘れられない…
貴公子然としていながら野性味のある…
しなやかな猫科の細い獣みたいな…

「…」

漆黒の髪が乱れている。

(あたしが夕べ、かき乱したせいだ)

腕に傷がある。

(あれはあたしが立てた爪跡だ)

胸板がかすかにピンク色なのはあたしが吸ったせいだ。
何もかもあたしが江本を乱暴に扱ったから
潔癖で美しい江本が少しだけ乱れて幼く見える。

「…」

事実、江本はあたしよりかなり若い。
年の離れた、あたしの弟より、まだ年下だ。
30代半ばのあたしとは違う。今からでも男として伸び盛りだ。

しかもだ。
江本は、弟が経営している
超!乙女チックな輸入雑貨の店“優衣”の副社長だ。

で。

乙女チックな女性は当然、王子様が好きな訳で
江本はかなり王子様タイプだ。
金髪碧眼じゃないが、黒髪で美しい瞳や整った鼻梁、形の良い、シャープな唇…

江本が店に立ったら売上が二桁違うくらい凄いのだ。

(こんなとんでもない男と結婚したのは何かの間違いだ)

あたしは、そろりとベッドから抜けようとする。

が。

ぐいっと腰を抱き寄せられた。

「あ…」

江本が目を閉じたままあたしの肩を唇でなぞる。

「…杏樹…」

低く甘い声があたしの肌の上を伝った。
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