二次小説voltage

□どうしてそんなに【鳳湊平】
1ページ/3ページ

「だめだ」

車に乗ったらいきなり言われた。
高級感ある、シックなラグジュアリー
柔らかな背もたれに体を預けようとした矢先
湊平さんがジャケットを脱いだ。
真っ赤になってる。暑いのかな。私は寒いけど。

「キミはっ!」

「え?」

首を傾げると、やや湊平さんの声が上擦る。

あの、心地良い、低くて、やや獰猛そうな甘い声が
見事にひっくり返っていた。

「これを!膝にかけろ!」

「…はい」

私はタイトスカートの膝に
大人しく湊平さんのジャケットをかけた。

「…」

白いファーのセーターを見つめる湊平さん。
穴が開くんじゃないかと心配になるくらい、じぃーと見つめられ
私は車内で思わず後ずさりをした。

「あの…。なんでしょう…」

「かわいい」

「…」

「…綺麗だ」

それだけ言う。
車が動き出した。

胸がいっぱいになってしまった。

久しぶりに時間が合い、
ご飯でも外で食べようと言う話になった。

お店にきた。

がっ!

「湊平さん、そんなに召し上がるんですか」

「いや、キミがだ」

「む、無理です!」

「…食わせたいんだ」

「…胸が苦しいです」

「え////」

「そ、そーゆー意味じゃなくて。
なんか、あの…
気持ちが満たされたら
お腹もいっぱいです…」

「…なぜ」

「湊平さんに会えたから」

「くそっ」

(くそ?)

「…俺も食べられない////」

「////」

二人して固まる。

結局、少しだけ頼んだ。

「…味がわかりません。幸せで…
おいしいんですけど…それ以上…、優しい感じで…」

「ああ…」

見つめ合い、微笑み合う。

帰りの車でもジャケットを私の膝にかけようとする湊平さん。

「あ、あの」

湊平さんのシャツ…筋肉が透けて見える。

「もう寒くないから…ありがとうございます、大丈夫です」

「目」

「はい?」

「目のやり場に困るんだ////」

「え」

「キミの膝小僧が見える」

「…」

「ああ、もう!」

頭をハンドルにぶつける湊平さん。

「どうしてそんなにかわいいんだ…」

「…そうでもないですよ?」

「…キミはムゴい」

車が発進した。

赤信号で一度止まる。

「キミを連れ去りたい」

「…はい」

「…優衣…」

「連れ去られたいです。湊平さんに」

「どうしてそんなにキミは…」

またハンドルに突っ伏した。
しかし膝の上に、ジャケットの下から
指が這った。

「…あっ……」

「もう帰さないからな」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ