IS 〜Poke-Master〜
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〜IS学園生活二日目〜
「あ゛ー……」
眠い。眠いったら眠い。
何故眠いかといったら、遅くまでDSの液晶に張りついていたからなのだが。なんというか、止め時がわからなかった。
「う゛ー……」
そして、オレと同じように眠そうな顔をしている人がもう一人。オレのルームメイト、ティナ・ハミルトンだ。
何故眠そうなのかといったら、遅くまでDSの液晶に張りついていたからなのだが。なんというか、止め時がわかっていなかったようだ。
「聡……また今日もやるから」
「お前な……いい加減懲りろよ。昨日何回やったと思ってるんだよ」
「まだ私が負けふあぁ……――越してるから」
「ゴメン……途中に欠伸が挟まったせいで全然聞き取れなかった。もっかい言って」
「もう……わかってるくせに」
『昨日……ヤった!?』
『しかも、何回も!?』
『あの二人……もうそんな関係まで!?』
『赤島くんはアタシが狙ってたのに……!』
周りが何か話しているようだが、内容がよくわからない。
ちなみに、ポケモンの話である。
昨日はずっと、ポケモンの対戦プレイで戦い続けていたのだが、ティナが妙に負けず嫌いなため、オレが最初に勝ち越してから勝負を挑まれ続けていたのだ。しかも、お互いかなりディープなプレイヤーだったので、一試合が滅茶苦茶長い。中には一時間ぐらいかかる試合もあった。
戦績、八勝五敗一分け。一分けはオレの自爆特攻技で同時に死んだからだ。そうした理由、早く寝たかったから。
しかし結果として、『ティナ』『聡』で呼びあえるぐらいには仲良くなった。ゲームは人を繋ぐ。さぁ、みんなもゲームをやろう!
『なあ、いつまで怒ってるんだよ』
『怒ってなどいない』
『顔が不機嫌そうじゃん』
『生まれつきだ』
と、ここでIS学園の唯一(唯二?)の男性のもう一人、織斑一夏が登場。隣にいるポニーテールの女子はルームメイトか?
「お、赤島」
向こうもこちらに気づいたようで、隣の子を引き連れて近づいてきた。てか、凄い不機嫌そうな表情してますよ? オレってそんなに嫌われてたの?
「うーん……やっぱり織斑くんの方がカッコいいわね」
「ティナさーん、本人を前にして比較するの止めてくれますかー」
泣くから。素面のオレはガラスのハートだから。ポケモンの能力で誤魔化してるだけだから。
「おはよう、赤島」
「よう、朝からデート?」
「んなっ! だ、断じて違う!!」
横の子が凄い剣幕で否定してきた。
とはいっても、彼女も満更でもないようで、さっきの不機嫌顔から一転、リンゴのように顔を赤らめていた。
「そっちだって似たようなものだろ」
「お前は男女が歩いてるだけでデートだと決めつけるのか? 常識を学べ、常識を」
「そっくりそのまま返すぜ、その言葉」
ちなみに、デートの本来の意味は『異性が時間と場所を決めて会うこと』らしい。同性だとデートにはならないから注意しようね! ……誰がするんだよ。
「それで、えっと……そっちの子は?」
「ああ、コイツはオレのルームメイトの――」
「ティナ・ハミルトンよ。よろしくね、織斑くん。と、えっと……」
「………………」
隣の子が獣のような目でティナを睨み付けている。
これが女のジェラシー……、視線だけで人を殺せそうだ。
「……篠ノ之箒だ」
「よろしくね、篠ノ之さん」
そして、全く怯むことなく対応するティナ。何コイツ。ゴルバットでもトレースしてるのか?
「早く食堂行こうぜ、遅刻しちまう」
「…………」
……織斑くん、君はこのこの修羅場的状況に気づいていないのか。どんだけ鈍感なんだ。略してどん鈍。
…………。
「どうした?」
「いや、また自分が嫌いになっただけだ」
「? よくわからないけど、自分の身は大事にしたほうがいいぞ」
「……ああ、そうですね」
織斑から見当違いなアドバイスをもらい、一行は食堂へと向かった。
その間、篠ノ之さんはずっとティナを威嚇していた。……篠ノ之さん。目が怖いです。
〜二時間目〜
「「専用機?」」
「ああ。二人分の予備機がないため、学園が専用機を用意するそうだ」
授業の始め、織斑先生のそんな発言でクラスがざわついた。
『せ、専用機!? 一年のこの時期に!?』
『いいなぁ〜。私も専用機ほしいなぁ〜』
「あの、それって凄いことなんですか?」
出たよ。織斑くんの天然無知。
「あのなぁ……よく聞け無知斑」
「無知斑ってなんだ」
「つまりな――――」
――――――――――――――――
『長くなりそうだから省略するよ!』
『簡単に言うと、ISのコアは数が限られている上に量産もできないから、個人にISが渡されるっていうことは凄い待遇なのだ!』
『「こういうことは前回のIS講座で言っとけよ!」とか思ったそこの君! とりあえず腹筋百回ねっ!』
――――――――――――――――
「――――ということだ」
「へー。凄いんだな」
「お前、本当にわかってるのか?」
リアクションが薄い人間は信用されないぞ。
「というわけだ。赤島は放課後第四アリーナに来い。先にフォーマットとフィッティングを終わらせる」
織斑先生からのありがたい御通達。早速貴重な放課後が潰されてしまった。
「ちょっと待ってください。俺のISは?」
織斑が挙手した。そう、呼ばれたのはオレだけ。織斑は何故か呼ばれなかった。
「織斑のISは準備に時間がかかるそうだ。だから先に準備が済んでいる赤島の用意を優先する」
「え、普通そういうのって平等性というものを――」
「男がガタガタ喚くな、見苦しい」
うわぁ、辛辣。
しかし、先に来たからといって贔屓されているとは思わない方がいい。何故なら織斑の方に力を入れて、オレの方は適当に作った、という可能性もゼロではない。
むしろ丁寧に整備されている分、織斑の方が贔屓目だと言えなくもない。
オレってそんなに嫌われる人間なのだろうか。
またひとつ自分が嫌いになる出来事が起きました。
だから今日はサラダ記念日。
…………ゴメンナサイ。
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