IS 〜Poke-Master〜

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「あ〜、疲れた」


 放課後、フォーマットとフィッティングを終えたオレ、赤島聡は筋肉痛で軋む体を引きずりながら食堂へと向かっていた。

 え? 時間が飛びすぎ? 気にするな。気にしたら敗けだ。
 所謂アレだ。時間短縮だ。経費削減だ。検閲削除だ。検閲削除ではないだろ。

「お〜い、赤島〜」

 あっ! やせいの イケメンが とびだしてきた

→たたかう
 ポケモン
 バッグ
 にげる

 たたかうっ!


「メガトンパァァァンチ!!」
「あぶねぇぇええ―――!!」

 しかし あかしまの こうげきは はずれた!

「くそっ! ならばもう一回……!」
「するな!」

 野生の織斑一夏は身構えながら叫んだ。

「ああ、なんだ織斑か。よかった」
「何が!? 学友を出会い頭に殴ることの何が“よかった”!?」
「いや、女子を殴るのはマズイだろ、人として」
「罪のない人間を殴るのもマズイだろ、人として!」
「ったく……ゴチャゴチャ騒いでないで食堂行くぞ、コラッタ」
「人間扱いされてなかった!?」

 相変わらず、織斑のイジられスキルだけは凄かった。育成のしがいがあるぜ……。


――――――――――

『“フォーマット”と“フィッティング”っていうのは、要はISを自分専用のものにする儀式みたいなものだよ!』
『ちなみに、今日の私の夕御飯はカツ丼だよ!』

――――――――――



「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」

 夕食を食べていたら、見たことのある金髪が高圧的な態度で近づいてきた。
 ちなみに今日のメニューはトンカツ定食。向かいに座る織斑と、その隣に座る篠ノ之さん(←どこから湧いた)はカレイの煮付け定食。オレの隣に座るティナ(←どこから略)はスープスパゲティだ。

 そして、オレとティナは食事の片手間にポケモンをしていた。

「聡。キングドラ作りたいから通信交換して」
「GTS使えよ」
「ここWi-Fi繋がってないのよ」
「じゃあ部屋戻るまで我慢しろ」
「嫌。部屋戻ったら昨日の続きするから」
「お前ら。食事中にゲームするなよ……」
「織斑は燃えろ」
「酷いな!?」

「わたくしを無視しないでくださる!?」

 しびれを切らした金髪がテーブルを叩いた。その衝撃で織斑の手元にあった熱々の味噌汁が入った器が跳ね、織斑の手を攻撃した。
 『熱っ!?』とか言ってる織斑は無視して、しぶしぶ金髪に目を向けた。

「何しにきたんだ、カシミア・スコットン」
「セシリア・オルコットです!」

 しまった。間違えた。西洋人の名前は覚えにくくて困る。

「アナタ、わたくしのことを馬鹿にしてますの?」
「そんなことはないぞ。オルコットさんはすごい人〜。オルコットさんはやればできる人〜」
「完全に馬鹿にしてますわよねぇ!」
「――って、織斑が言ってたぞ。鼻歌混じりに」
「なんですってぇえ―――!!」
「誤解だ! 赤島! お前いつか殴るからな!」

 いい感じにオルコットの意識が織斑に向いてくれた。これからもこの手法を使っていくことにしよう。

 ふと気づいたら、手元にあったはずのDSがティナの手に渡っていた。こんにゃろ、持ち主の許可もとらずに。

「はぁ、はぁ……そういえばあなた、篠ノ之博士の妹なんですってね」

 若干息切れたオルコットの矛先は、織斑の隣、篠ノ之箒さんに向かった。


 篠ノ之束。ISの生みの親で天才科学者。篠ノ之さんがその天才の妹だと判明したのは今日の休み時間の時だ。


「妹というだけだ」

 ギンッ!

 …………こぇえーよ。人間がするような
目付きじゃねぇよ。オルコットのヤツ、ガチで怯んでるぞ。ぼうぎょが一段階下がったじゃんかよ。

「ま、まあ。どちらにせよ、クラス代表にふさわしいのはわたくし、セシリア・オルコットであるということをお忘れなく」
「そっちこそ。クラスの奴隷にふさわしいのはコイツ、織斑一夏であることを忘れるな」
「ふさわしくねぇわ、そんな役職!」
「覚えておきましょう」
「覚えんでいい!」

 髪を手で払ってターン。優雅に去っていった。

 ……見た目だけは様になってるんだよな。





「――おい。オレが必死に貯めたふしぎなアメが半分ぐらい無くなってるんだが」
「さあ聡、今日も対戦よ!」
「テメェ……!」


 今日の戦績、15勝0敗


 オレのガチパーティによってボコボコにされたティナは、深夜2時前くらいに不貞腐れて寝てしまった。





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