IS 〜Poke-Master〜

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 一方、既に試合を終えた一夏と幼馴染みである箒は、ピットに備えられたモニターでセシリアと赤島の試合を観戦していた。

「始まったな……」
「ああ。セシリアはやっぱりBT兵器を使ってきたか」

 セシリアの専用機――ブルー・ティアーズの最大の特徴は、自立起動兵器による同時多角攻撃だ。BT兵器と呼ばれるそれは、イギリスがブルー・ティアーズに試験的に導入した兵器である。
 そのため、いくら代表候補生の実力を持つセシリアとはいえ、その扱いにはまだいくらかの隙が見える。

 その攻撃に対し、赤島は装備も展開しないで必死に逃げ回っていた。しかし、全て避けきれるはずもなく、赤島の機体のシールドエネルギーはみるみる減っていく。


「何故赤島は装備を展開しないのだ!」

 箒の激昂がピットに響く。
 それに答えたのは、真耶だった。

「展開しないじゃなく、できないんです」

 生徒二人の頭上にハテナマークが飛んだ。

「できないって、どうゆうことですか」

 一夏の問いに答えたのは千冬だ。その答えは、二人の想像を遥かに上回る――下回るものだった。


「そもそも、アイツの機体――――Pm‐6には必要最低限の装備すら積まれていない。完全な丸腰だ」
「「なっ!?」」


 ISに武器が積まれていない。
 武器を使って戦う“IS”という競技にとって、武器がないというのは、テニスの試合にラケットを持たずに挑むようなもの。
 無謀という言葉すら生温い、もはやバカの所業である。


「いや、それでも後付武装ぐらいは……」
「それも無理だな。あの機体は拡張領域が極端に少ない。どころかほぼ0に等しい。あれではナイフ一本すら量子変換できないだろう」

 説明を加える千冬の声には、明らかな憐憫の色が見えた。

 モニターの中で、必死に攻撃を避け続ける赤島の顔に苦悶の表情が浮かんでいた。

「さらに付け加えて言えば、スペックも訓練用IS程度しかない」
「えっ!? それじゃあ……」
「ああ。アレを使うくらいなら、訓練機で戦った方がマシだろう」


 千冬の言葉に、一夏と箒が凍りついた。
 武器が使えず、スペックも並。おまけに相手は代表候補生、こちらはつい最近ISを使い始めた素人。

 もはや赤島の圧倒的敗北は必須だった。



 誰もがそう確信していた中、一夏だけはどこか違和感を感じていた。

 思い出されるのは、つい一時間ほど前の、赤島との会話。


『赤島の専用機って、どんなやつなんだ?』
『あー……一言で表すなら――“赤島聡専用の機体”』
『? どういうことだ?』
『ま、お前にはわからんさ』


(あの発言……赤島はまだ何かを隠してるんじゃないか?)


 そんな一夏の懸念を余所に、試合は着々と進んでいく。

 赤島は未だ、セシリアに触れることすら出来ていなかった。







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