頂き物2

□禁じられた聖夜
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期末考査も終わり、終業式も間近に迫ったある日、土方は銀八に資料を渡すからと、彼の根城である準備室に呼び出された。
そして、資料を貰ったら、一緒に帰れるかな、とか思っていたのに。

「何でこんなことになってんですか…」
「だってほっぺたピンクにした土方くん見たら我慢出来なかったんだもん」
「もん、って…」

いい大人が、語尾にもんって。
早く会いたくて、教室から準備室まで走ってきたから、多少顔は紅くなっていただろうけれど、何でそれが襲われる理由になるのだ。
既に一度銀八と情を交わした後の土方は、ぐったりした。

「なに。土方は先生のこと欲しくなかった?」
「そ、れは…」

テスト勉強や何やで、最近はまともに顔を合わせていなかった。
だから欲しくなかったと言えば嘘になる。
けれど、頷いたが最後、第二ラウンドに突入されるのが目に見えていて、頷くに頷けなかった。
準備室に来て、すぐに抱かれた。
抵抗して軽くいなされてしまって、後は声を押さえるのに必死だった。
やっと銀八がイッて落ち着いたのはいいが、まだ身体の中に受け入れたままの所為で、ソコがひくひくと痙攣している。

「さて、先生ン家に行こっか」
「え、まだする…んですか?」
「当然。さ、抜くよー」
「ん…ぁっ」

ずるりと銀八が抜け出て、含むモノが無くなった蕾が寂しげに収縮した。
銀八は一旦離れると、土方に白衣を着せ掛けて自分の身支度を始める。
そして、何気なく目をやった机の上を見て、ハッと固まった。

「あ、」
「……せんせ?」
「ごめん、土方。まだ帰れねーわ」
「?」

さっきまで帰る気満々だったのにどうしたのか。

「仕事。まだ途中だった」
「……俺、帰った方がいいですか?」
「や、もうちょっとで終わるし、待っててくれると嬉しいんだけどなー」

白衣にくるまって見上げると、銀八はダメ?と土方に訊いてきた。
邪魔になるかと思ったのだが、このまま待っていても良さそうだ。

「待ってます」
「ん。じゃあ寝てていいよ。終わったら起こすから」
「…はい」

準備室は暖房が効いていて暖かい。
白衣の下に何も身につけていなくても、充分だった。
既に微睡みかけていた土方は、頭を撫でられる気持ち良さにすーっと眠りに落ちていった。




一度はペンを手に取ったものの、背後ですやすやと寝息を立てる土方が気になって仕方ない。
そっと振り向くと、土方は白衣に顔をすり寄せてうっすらと微笑っていた。
丸めた脚が、白衣の裾から覗いていて、その白さに目を奪われる。
子猫のように丸くなって眠る土方は、銀八の理性を揺らした。

「……………」

可愛い。
銀八は無意識に携帯のカメラを構えた。パシャっと響いた音に、我に返る。

「何で写メ撮ってんの俺!?」

本当に無意識の行動だった銀八は、ちょっと自己嫌悪に陥った。
でも、この写メ待ち受けにしようかななどと考えるあたり、結局は土方馬鹿なのかもしれない。





ペンの走る音で、意識が浮上した。
目を閉じたまま辺りの気配を窺うと、銀八が少し離れた場所にいるのが分かった。
すん、と鼻を鳴らすと白衣から甘い匂いと煙草が混じった匂いがする。
大好きな先生の匂いだ。
まだ起きたくないなと、土方は夢うつつに微睡む。
けれど、銀八が伸びをする気配に、目が開いてしまった。
鼻の辺りまで白衣を被って、土方は銀八を見る。
まだ仕事中のようだと知って、がっかりした。
銀八はまだ仕事のモノなのだ。
自分のではない。
早く銀八を独り占め出来る時間になればいいのに。
土方はそっと身体を起こし、白衣に袖を通すと、足音を立てないように銀八に忍び寄った。

「先生、まだですか?」
「うお!?」

手は白衣の袖で隠れて見えない。
背後から銀八の身体に手を回し、土方はちょっとした悪戯のつもりで無防備な耳に、かぷっと噛みついてみた。

「な、なんッ、土方!?」
「まだ?」

びっくりして口をパクパクさせている銀八に、土方はもう一度聞く。
寝起きの所為か多少寝ぼけているらしく、声に甘えが混ざる。

「……まだ。だからもうちょっと大人しくしてなさい」
「………」
「なに?」
「…帰ります」

ぽつりと呟くと、土方はそのまま出て行こうとする。
それを慌てた銀八に止められた。

「ちょ、ちょッ!白衣の下すっぽんぽんでどこ行こうってのお前は!!」
「だって邪魔だし…」

白衣をきゅっと握り締めて、土方は俯く。
土方の身体にはサイズが合っていない白衣は、情事の名残が色濃く残る肌を覗かせている。
銀八は、またぞろ息子が元気になりそうになるのを堪えて、土方を抱き締めた。

「こーの甘えたちゃんめ」
「あ、甘えてなんか…ッ」
「先生に構ってもらえなくて寂しかったんでしょ?」
「ちが、う…」

耳まで真っ赤に染めて、土方はぐいぐい銀八の胸を押す。
離れたいのに、銀八の腕の力は強くなるばかりで、隙間なんか無くなってしまった。

「嘘つくとお仕置きしちゃうよ?」
「せんせ…」

言葉とは裏腹に、優しい手つきで髪を梳かれ、土方は腕力ではない力に抵抗を奪われる。
先生はいつだってズルい。
こんなに好きなのに、これ以上好きにさせてどうしようと言うのか。

「…ホントは家で言おうと思ってたんだけど、甘えたな土方に免じて今言っちゃう」
「…?」

悪戯っぽい声音に、土方は顔を上げた。
頬が紅くなっているだろうけれど、今は構わない。

「クリスマス。イブに二人でデートしようか」
「デート…?」
「そ。デート」
「……ええッ!?」
「反応遅いぞ土方ー」

デートという単語を理解するのに、やたら時間が掛かった土方は、かなりの間を置いて驚きを露わにした。
だってデート。
教師と生徒という立場の二人には、叶わぬ願いの中の最たるものだった。
男同士だから、二人の関係を疑われる可能性は低いだろうが、やはり色々とマズい。
ずっと叶えば良いと願っていたけれど、諦めていた。
それをクリスマスに叶えてくれると、銀八は言う。
驚くのも無理はない。
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