Ciapp
□もうぼくの
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先日、結人と喧嘩して別れたらしいお前は、毎日のように俺に愚痴をこぼしにきた。そう、それはくどいほどに毎日似たような言葉をこぼすのだ
「放置なんて最悪」「馬鹿ばか」「サッカー馬鹿」「鈍感」「もう好きじゃないんだから」
聞き飽きたほどの言葉、半ば呆れたような顔で聴いていた今日、ばしっと頭を小突かれる
「あでっ!」
「もーっちゃんと聞いてよ一馬!」
「ざけんな、聞いてるこっちの身にもなれ、」
場所はほとんど人気のない放課後の階段。少し叫べば声が戻ってくる。とはいえど、近くに人などほとんど来たりはしないが。
しかし、こんな空間も苦ではない。男というものは単純なもので、こうして毎日女と過ごすと、(相手がこいつだから、なのかもしれないが)惹かれてしまうものなのだ。例え、想われてはいないとわかりきった恋だとしても、
「つーか、お前、結人のこと好きなのかよ?」
「えー好きじゃないよー?」
「…だったら、」
俺を好きになれよ。
言いだしそうになった言葉をはっとしてつぐむ。今、何を言おうとした。結人はまだこいつを好きだと俺は知ってるし、心ん中ではこいつだって結人を好きなのは俺が一番わかってる。…仮にも結人は俺の親友で、あって、
「だったら、なに?」
不思議そうにお前に顔を覗かれ、ばっと顔を逸らしたそこに、
「…結、人…」
なぜこの学校にいるのかわからないが、練習着をきた結人が経っていた。
「おいこらっ一馬といちゃついてんじゃねぇっ」
「ゆ、うと、なんでアンタここにいんのよ!」
「るせっ、サッカーとお前どっちが好きだとか比べらんねぇもん答えさせようとすんなよ、…ちゃんとお前、好きだし」
俺がいるにも関わらず、結人は俺の隣に座る女に気持ちを伝えてる(居たくねぇ、)しかも、隣に座る女は顔赤らめてやがる。…相談相手ってするもんじゃ、ない、な。
俺は、すっとその場を立ち、手をひらり、
「じゃ、俺はここまで、ってことで」
もう僕の出る幕はない
(幸せになるといーよ、お前は)(俺は、あくまでお前の相談相手)(それ以上、上には行けない)(どれほどお前に、気持ちを抱こうとも)
(お題提供:確かに恋だった)(恋人になれなかった5題、より)