Ciapp

□あのとき
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ふと、流れてくる噂。
なぜこんなにも、人の噂は(それも、恋の話になると)早く流れてきてしまうのだろう。そして、この耳へと届いてしまうんだろうか。



”あいつ、結婚したらしいぜ”



大きな世界を旅しているオレ、まさかあいつの噂をミナモシティで聴くとは思わなかった。


まさか、と思った。結婚、なんて、まだまだ、あいつも、俺も先の話だと、思ってたはずだというのに


突然、ぎゅっと胸がしぼんで、あいつの顔が見たくなって、




思い出される記憶、幼いころ、まだポケモンを持っていなかったオレとお前、一緒に大きな声で笑って、小さな小さな町を駆け回って、―成長して、昔はお前が大きかったけどある日お前の背を抜かした日、ふっくらと膨らんだ胸が見え、恥ずかしくなって目をそらしたあの日や、
だんだんと声も顔立ちも大人っぽくなっていって、お互いに忙しくなっていった中学時代、そのころやっと初めて君への感情に気づいて、でも気付いたころには自分のポケモンを持って、オレは旅に出なくてはならない時期へと来ていたんだ


あれが、最後の別れになるかもしれないと、わかっていたはずで。
でも、口は開かなくて、曖昧な気持ちを心のうちに、「じゃ、またな!」と、せっかちな性格のオレは足早に街を出て行った。



「…ああ、あいつ、結婚したのか」



どこからかムクホークが飛んできて、渡された手紙には、結婚しましたの文字と、あいつの名前が書かれていた。





あの時伝えておけばよかった
(なんて、今更遅い)(伝えたい言葉は、その場で言っておかないと、)


(お題提供:確かに恋だった)(恋人になれなかった5題、より)

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