脇役男子N
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あるドアの向こうから声が聞こえる。
──なぁ…。
──ん?どした?
誰かが耳をそばだてていた。
それはとっても王道な、でもちょっぴり違う全寮制男子校での出来事。
「なぁ…」
「ん?どした?」
最初に声をかけた少年が視線を動かした。
その少年の容姿は一言で言えば平凡。
髪は染めたことのない艶やかな真っ黒。瞳は色の濃い焦げ茶。目鼻立ちは秀でた所はなく本当にどこにでもいる平凡な少年である。
少年の視線の先には
“扉、開けるべからず”
とドアに赤い文字で書かれた標識の板が上の角の両端通された紐にドアノブに引っ掛けられた形でぶら下がっていた。
「アレ何」
言う声は少し固い。
「なんか不気味だなぁ、おい」
不安げな声に同調する声の主は、その平凡な少年とは対照的に恐ろしく整った容姿をしていた。
隔世遺伝による銀色の髪と碧い瞳だけでも目を見張るが、その目鼻立ちも人形の様で少年よりも少女を思わせるもので、誰もが見蕩れる姿をしている。
平均身長よりも少し小さい二人は先程見つけた不気味な標識をしばらく見ていた。
「なんか呪われそうだし、見るのやめよ」
「うん…」
「じゃ、次俺の部屋行こ。同室のやつにお前の同室どんなやつか聞いとこうぜ」
「そうだな」
銀髪の少年が安心させる様にそれは綺麗に笑う。
それにつられてもう一人の少年も誰かにとっては可愛らしい笑顔で笑ってみせた。
「っ、…あ、そういえばここの同室、名前なんだっけ?」
「え?…えーと確か…、な…なか、なかがみ──……」
なかがみなつたろう、だっけ?
仲神 夏太朗は、その時、携帯のメール送信ボタンを押した。