君といた軌跡T

□episode 1
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放課後のチャイムが鳴り響く校内。
グランドからは野球部やサッカー部の活気のある声が響いている。
夕日が窓に射し込み、オレンジ色に染まる教室で携帯を触ったり雑誌を読んで暇を潰していたあやかは、「終わったぁ…!」と課題の終了を知らせるまなの声を聞いて顔を上げた。

『お疲れ様』
『ようやく終わったか』

あやか達の労いの言葉に、「お待たせしました」と笑顔で答えたまなは、たった今終わらせた補習プリントを教壇にある回収箱へと入れた。
なぜまなだけ補習プリントがあるのかというと、言わずもがなテストで赤点を取ったからである。

あやかは、正面に座っていたゆうなが読んでいた本をパタリと閉じて立ち上がったのを見ると、自分も机に広げていた雑誌等を鞄に詰め込み帰る準備を済ませて、早々に廊下へと繋がるドアを開けた。

『まな、行くよー』
『…早く』
『ちょっと待ってェ!!(汗)』

まだ帰る準備のできていないまなを、ゆうなと共に急かすように振り返る。
あやかは慌てた様子で帰り支度をするまなを待ち、彼女がこちらに小走りでやって来てからようやく教室を出た。



『…あやか、これから時間ある?』

校門を過ぎたところで、ゆうなが言った。
普段、自分から予定を聞いたりしないゆうながそんなこと聞いてくるなんて珍しい…と思いながらも、このあと特に予定もないあやかは「うん」と頷いた。

『何かあるの?』
『…買い出し、つきあって欲しい』
『買い出し?』
『修学旅行の』
『あ、そっか…言われてみればもうすぐだね。いいよ、ついでに私も買う』
『あたしも行く──っ!楽しみだよね!修学旅行!!』

隣で話を聞いていたまなが会話に参加すると「…え?まなも来るの?」と、ゆうながいつもの冷めた口調で呟く。
一瞬、空気が静まり返ったものの…まなはゆうなからのそういった扱いに慣れているようで、まるで何も聞こえなかったかのように言葉を続けた。

『……行き先、沖縄だよね!あたし初めてなんだぁ!!』
『…え、来るの?』
『行くよ!?(泣)』
『UV対策しなきゃ…✧』

隣で、まながゆうなに対し「仲間外れ反対っ!」と涙ながらに訴えているのを他所に、あやかは自身の日焼け対策で頭がいっぱいだ。

『(修学旅行…か)』

高校生活、最後にして最大のイベント。

『(いっぱい楽しんで、いっぱい思い出作らなきゃ…!)』

未だに嘆くまなと、それを軽くあしらうゆうなを見つめて小さく微笑むと、あやかは二人の間に割って入った。

『いっぱい写真撮ろうね!!』

突然の言葉にキョトンとする二人。
けれど、その後すぐに顔を見合わせた二人はニコニコと笑って自分達の中心に立つあやかにつられるように笑顔を向けた。

『『うんっ!!』』





***


(買った、買った〜♪)

行きつけの大型ショッピングモールで買い物を済ませたあやかはご満悦の様子。
両手には大量のショップ袋がぶら下がっている。

『…あやか』
『ん?』
『…それ、何買ったの』

修学旅行は、たかだか2泊3日。
でも、あやかが手にしている荷物はどう見たってそれ以上の量だ。

──いったい、何日泊まる気なんだろ…

なんて疑問に思うゆうなにあやかがキョトンとして答える。

『え?服とか、服とか…服……とか?』
『制服で行くのに服は必要ないんじゃ…』
『…や…これは…私用に…デスネ;』
『何しに来た』
『ごめんなさぁい!!(汗)』

「欲には勝てないんです〜!!」と嘆くあやかを見つめて、ゆうながやれやれと息をつく。
別に服装に無頓着ってわけでもないが、あやかほどお洒落に気を使ってもいないゆうなにはまったく理解できないことだった。

『なーんだ、ただの買い物かぁ。そんなに買い込むなんてあやか浮かれすぎ〜って思ったのにぃ』
『いや、どう見ても1番浮かれてるのまなでしょ』
『え?』

まなの買ったものを見てあやかが言った。
彼女の持つ袋には大量の遊び道具とお菓子が詰め込まれているからだ。

『……確かに。一番無駄遣い』
『Σ!? 何言ってんの!修学旅行を楽しむのに一番の必需品だから!!』

…なんて話しているうちにコンクリに囲まれた暗い路地に差し掛かった。
空はまだ僅かに明るさを残しているけれど、街灯もないこの路地は夜のように暗い。

『この道ちょっと怖くない?違う道、通ろうよ…』

少し不気味にも感じるその路地を、怖がりであるまなは当然避けようとするのだが、自分の記憶が正しければ確かこの先を右に曲がってあとは道なりに進めばすぐ大通りに出るはず…。
荷物も多いし、ここは近道した方がラクだという理由でまなを説得したあやかは、体に染みついた習性のまま暗い路地を右に曲がった。

──ん?

だが、右に曲がって数歩歩いたところですぐ数m先に左手に折れる角があった。
こんなとこに曲がる場所なんてあったっけ…とあやかは思ったが、この裏道を通るのは久しぶりだし、単なる記憶内の誤差だろう。
何の疑いもせず、その角を曲がって最後の小道を道なりに歩いていく…。
カーブを抜けると、目の前に眩しい光が広がった。

よし、国道に出た。
………いや、出たはずだった──のだ。





 
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