君といた軌跡T

□episode 6
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空は快晴、風は順風。

宴をした日から数日…
一行は、特にこれといったトラブルに見舞われることなく穏やかに航路を進んでいた。

時が経つのは早いもので──
私たちがこの世界に来てから、もう半月ほど経った。
初めこそ不安だらけだった私たちだけど、
心強い仲間のおかげで不思議と今は不安はない。

それもこれも──


「っぎゃあああああ!!!」

憂悶する暇もないくらい、船内がいつも賑やかなおかげかもしれない。

今度は何事かと、ゆうなに借りて読んでいた本のページを捲る手を止めて中央甲板に視線を移すと、ウソップが目玉から火を噴いて悶絶しながらその場に転げ回っていた。

その傍らにはオロオロする様子のまな。
そういえば、さっきからウソップと二人で実験道具並べて何か作ってたな…。

『どうしたの、あれ』
『事故』

隣にやってきたゆうなに話を聞けば、ナミのみかん畑に手を出そうとしてサンジにブッ飛ばされたルフィがそのままウソップに激突し、その拍子に小瓶から噴き出した真っ赤なタバスコがウソップの顔面に飛散したらしい。

『…うわ;』
(あの赤い液体、タバスコだったんだ…)

相変わらず悶絶しているウソップに「御愁傷様」と、あやかが手を合わせたその時──ナミが開いた新聞の隙間から、1枚のチラシがひらりと甲板に落ちた。

『ナミ、何か落ちたよ?』
「ん……ちらし?」

その言葉に、後甲板の手すりに座っていたルフィが顔を向ける。
──そして、甲板に落ちた折り込み広告をデッキチェアから一瞥したナミは言葉を失った。

「え…」
「お?」
『あ!』
『ん?』

…………



「『あああああ──っ!!!!』」

クルー達の声が、大海原に向かって盛大に響き渡った。
悲鳴の理由は…

「──なっはっは!おれ達ばお尋ね者゙になったぞ!!」
「生死に関わらず……3千万ベリー!!?」

ルフィが賞金首になったのだ。
ゴーイング・メリー号の後甲板で、麦わら帽子のルフィが折り込みチラシを片手にど〜んと大物笑いしている。

『ルフィ、すごーい!!』
「なっはっは!だろォっ!?」
「あんた達、なに喜んでるのよ!!これは命を狙われるってことなのよっ!?」

事の重大さを分かってない彼らにナミがイライラとして言った。
ルフィのニコニコ顔が大写しになっているチラシの手配書で、全世界に懸けられた賞金は3千万ベリー。

「この金額ならきっと海軍本部も動くし、強い賞金稼ぎにも狙われるし…」

深刻顔のナミは俯いた。
一方で、ルフィは「はっはっは!!」と笑いが収まらない。

ウソップはウソップで、手配書の写真の隅っこにちょっぴりだけ写っていた自分を指しながらサンジに自慢しており、見事に事の深刻さがわかってない男どもにがっくりきたナミは手すりに寄っ掛かって頭痛そうに額を押さえた。

(…これは"東の海"で、のんびりやってる場合じゃないわね)

ナミは思案した。
手配書を見た賞金稼ぎが情報を探れば、当然ルフィの居場所は東の海とめぼしをつけるだろう…。
ひとところに長居をするのは危険が大きい。

「はりきっでグランドライン゙へ行くぞっ!野郎どもっ!!」
「『うぉ───っ!!!』」

ナミが悩む中、当の本人達は何も考えないで勇ましく腕を振り上げ喜んでおり…バカ騒ぎをする彼らをよそに、1人蚊帳の外だったゾロは深刻顔であやかを見つめた。

「……」
(3千万ベリー…)

ナミの言う通り、この金額なら海軍本部も動くだろう。
狙ってくる賞金稼ぎだって、今までの奴らとは比べもんにならないはずだ。

「…おれが守る」

ルフィ達とはしゃぐあやかを見つめ、決意を新たにするゾロ。
──と、不意に視界の隅に島影を捉えたゾロは船首から声を投げた。

「おい、なんか島が見えるぞ?」

その声に全員が視線を海に向けると、確かにゴーイング・メリー号の針路、水平線上に島影が見える。

「見えたか…」

ナミが言うには、あの島が見えたということは〈偉大なる航路〉に近づいている証拠らしい。

──そして、もう1つ。

あの島には有名な町があるという。
その名はローグタウン。
別名『始まりと終わりの町』と呼ばれ、かつての海賊王ゴール・D・ロジャーが生まれ、そして処刑された町だ。

「海賊王が死んだ町…!!」

伝説の男の名を聞いた途端、ルフィの表情がすっと引き締まった。
「…行く?」と尋ねてきたナミに、ルフィは当然「ああ」と頷き…船長の決定により、一味はローグタウンへと寄港することとなった。







  
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