短編U
□助けて…
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「時雨殿!」
また、障子を壊すのではないかと思うくらいに障子を開くと手拭いと、りんごを持っていた。
「りんご?」
「女中の方が消化にいいと渡してくれたでござる!」
時雨は渡された冷たい手拭いを受け取りながらりんごを見つめる。
幸村はりんごの皮を剥く気なのか小刀を取り出す。
(…危ない気が…いや…槍をあれだけ振り回してたら…)
ザクッ
(…大丈夫なんて思う私が馬鹿だった…)
「痛いでござるぅぅぅーーー!」
「分かったから叫ぶなぁぁぁ!」
時雨はりんごと小刀を強引に奪うと幸村の口を塞いで止血をする。
(…どっちが看病してもらってんだか…)
ため息をつきながら止血を終えるとりんごを幸村に渡す。
「りんごなら皮がついてても食べられるから井戸水で洗ってきてくれる?」
子どもをあやすようにして言うと幸村は頷いて部屋から出て行く。
「…遅くない?」
それからしばらく経つが待てど暮らせど幸村は帰ってこない。
(…また何かやらかしたのか?)
そう思っていると障子に幸村らしき人影が映り、障子を少し開いて幸村が泣きそうな顔でこちらを見てくる。