短編U
□助けて…
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(うん…間違いない…何かやらかしたんだな)
悟る時雨だが、あんな捨てられた子犬のような目をされると咎められなくなる。
「…幸村…おいで?」
優しく言うと幸村は少し安心したように入ってくる。
「井戸水で洗おうとしていたらりんごが井戸に落ちたでござる…それを拾いに井戸に飛び込もうとしたらみんなに取り押さえられたでござる…」
(…そりゃ、取り押さえられるわな…それで遅かったのか)
時雨は頷きながら幸村の頭を撫でる。
ぐぅぅぅ…
その時、静かな部屋に響き渡る音。
「時雨殿…腹が減ったのでござるね!?」
(…こいつ…料理作る気だ!)
「いや…そこまで減ってないからだい「いましがた待たれよ!某が料理を持って参ろう!」…幸村ぁぁぁ!」
青ざめながら幸村を止めようとするが幸村はそんなものでは止まらない。
善は急げと言わんばかりに走り去っていく。
時雨も慌てて部屋を出るが幸村の姿はもう見えなかった。
「うぅ…どうしよう」
(…あっ!…でもこの時間なら女中さんたちがいるよね?…なら安心だな)
後は女中がなんとかしてくれると信じて時雨は布団に戻った。
「時雨殿!」
幸村は嬉しそうにお盆を持って時雨の部屋に入る。
「お粥だ!」
そこには、温かい美味しそうなお粥があった。
「某も手伝ったでござる!」
「幸村…ありがとう!」
(オカン…ついに息子も戦以外の取り得が出来たよ!)
時雨は心の中で佐助に報告するとお粥を一口食べた。
「うえっ…」
時雨は思わず呻く。
「どうしたでござるか!?」
幸村は口を押さえる時雨の背中をさする。
幸村は気持ち悪くなったのかと思ったらそうではなかった。
「幸村君?…塩どれくらい入れた?」
「ひとつまみでござる」
幸村はキョトンとしながら鷲掴みする動作をする。