短編U
□助けて…
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「ハハハ…幸村…ごめんね?私今食欲ないんだ…また後で食べるよ」
若干涙目になりながら時雨は後ずさりするが幸村はそれを許してはくれなかった。
「食欲がなくても少しは食べないと力が出ないでござる…それに先程腹の虫が鳴ったでござろう」
「…イヤァァァーーー!」
幸村は時雨の肩をしっかり掴むと布団に無理やり戻し、恐ろしいお粥を無理やり時雨に食べさせたのだった。
翌日
(時雨ちゃん…風邪引いたんだって?…どうせ雨の中殴り愛をしてたんだろーけど…)
偵察を終えた佐助は女中からそんな話を耳に入れると時雨の部屋に向かう。
(偵察終わったら今度は城での騒動…俺様ってほんと休む暇がないよなぁ)
俺様って凄いと自分で思いながら時雨の部屋に近づく。
ドッタン
バッタン
ガッシャーン
「…いやっ!」
どうやら時雨の部屋から時雨の必死な声と騒ぐ音が聞こえる。
「時雨ちゃん!」
敵襲かと思い佐助は慌てて部屋に入ると、そこには恐ろしい風景があった。
部屋は荒らされて家具は倒れ、畳には赤黒い何かが飛び散っている。
そして、何より佐助を驚かせたのが時雨を押し倒して腕を頭上で拘束して逃げれないように組み敷いた幸村。
その幸村は赤黒い何かを泣きながら抵抗する時雨に無理やり口に押し込んでいた。
「…もしかして偵察場所に幻覚の香でもあったのかな?…それとも俺様疲れてるのかな?」
佐助はブツブツと呟くと開いた障子を閉める。
「俺様もまだまだだねぇ…」
佐助は目元に手を当てるとそくさと逃げていく。
「佐助ぇぇぇーーー!助けてぇぇぇ!」
そんな時雨の断末魔の叫びは聞こえなかったことにして…
(旦那はあんなことするような怖い子じゃないもんね?…甘くて優しいいい子だもんね?)
そう、自分に言い聞かせながら…