皐月 通常

□1日目
1ページ/2ページ

私もあの頃からずっとさっちゃんのこと好きだったよ!



そう言ってくれると思ってた…♡嬉しいでしょ?それから…少し驚いてる。見ればわかるよ、キミの瞳は素直だから…あー、もしかして…俺が推理推理って言ってたやつ、事件の推理だと思ってた?そんなはずないじゃーん♡だって犯人は最初からわかってたし。俺がずっと悩んでたのは、椿への気持ちについてだよ。でもー…ぎゅっ、ぴとっ…(朝日奈が椿とおでこをくっつける…)



犯人わかってたの!?



それももう、スッキリ解決したからさ?…俺は、椿が好き。世界中の何よりも好き。好き、好き…だーい好き♡子供の頃よりもずっと好きになってる…今まで気付けなかったけど、自分でも驚くくらい椿のこと欲してたみたい。んー…こうやってくっついたまま離れたくない…けど、まだ事件の最中だからね。聴衆の前でずばっと真犯人を暴くまでが探偵のおしごとだし…ぱぱっとやって終わりにしちゃおっか。(ぎゅっ…)さ、戻ろ?



うん!



――…【多目的ルーム】「むっ、来たか…」やあやあ、お待たせしましたよっと。皆揃ってるよね?「その…本当にやるのか?推理とやら…君が探偵だと言われても、俺にはまだ信じられないんだが」 Keine Sorge!心配しなくても大丈夫ですよセンパイ、俺が全部解決して見せますから。さーてと…ちょっと長くなるかもしれないけど…椿、ちゃんと話に付いてきてよ?



うん…頑張る



まずは…行動を思い出しながら表に書き起こしていこうか。いっちゃん最初、俺達は徒歩10分ほどかけてデザイン科の校舎に到着。多目的ルームに荷物を置いて…そのまま普通科の校舎に戻った。んで、数十分のレクリエーションを受けて…多目的ルームに戻ったら…俺達が置いたはずの荷物が全部消えてた。綺麗さっぱりね。ここまではOK?



うん



ん、スマートな返事で助かるー♡次に…俺達はエレベーターを経由して、上の階にある教務室に向かった。教師に盗難を報告してから多目的ルームに戻ると…先ほど消えていたはずの荷物が、どういう訳か全て元に戻ってた。でも金品や貴重品はしっかりと盗まれてたから、誰かしらがこの密室に侵入したのは間違いない。まとめると…犯人はどうやって密室に侵入したのか。んで、どうして一度盗んだ荷物を元に戻したのか…ってのが、この事件の肝になってる二つの謎かな。



…そうだよね…



ま、俺に任せてよ。すっきり解決してみせるからさ。「ああ…本当に不思議でならない。消えたはずの荷物が元に戻る盗難事件なんて、聞いたことがないぞ」 俺も聞いたことないですね。盗むだけなら、そんな危険なことする必要ないんで。つまり…荷物が戻ってるってことは、犯人側にそうしなければならない理由があったってことになる…。椿、どんな理由かわかる?



…全然わからない



ぶっぶー。ま、普通はわからないから安心して(笑)その理由とは何か?答えは一つ…盗みを働くために荷物を戻す必要があったからだ。「…???すまん、どういう意味なのか…盗むために戻すって…順序が逆じゃないか?盗んだ後に戻したんだろう」 あはは、まーそう思うのが当たり前だよね。先に答えを言おっか…。



うん…



この一件で使われたトリックの正体は、『校舎入れ替えトリック』だよ。「校舎入れ替え…って…どゆこと?」 おー、全員いい感じに首捻ってるね。めっちゃ面白い(笑)んじゃー説明してくよ…まずこれを見て。ここのパンフレットなんだけど…この通り、普通科の校舎は何の意図も無い構造だよね。けどデザイン科は違う。二つの校舎が左右対象…反転しても同じ形になるよう、左右が全く同一の作りになっているんだ。さすがはデザイン学科、校舎の見た目にまでカッコつけてるねー。



そうなんだ…



ま、カッコいいのは大事だしそれは良いとして…これに気づいた時、俺はふと思った。外見の構造が左右対称なら、内部構造…それもデザインに至るまで…ほぼ同じになってるんじゃないかってね。ま、それじゃあ迷子になっちゃうから違う部分はあるんだろうけど…俺達は新入生だし普通科の生徒だ。デザイン科校舎の間違い探しなんて、初見で気付けるはずない…つまりね…何かの拍子に逆側の校舎へ連れて行かれてたとしても、俺達じゃあ気付けないってことだよ…!



…じゃあ、荷物がなくなった時は、元の部屋じゃなくて別の部屋にいたってこと!?



それは後で説明するから、一旦このまま聞いてて?これで、多目的ルームから荷物が消えたトリックに説明がつけられるんだよねー。行動表を見返してみて。ここのAで俺達が居たのは、左校舎にある多目的ルーム…わかりやすく『多目的ルームA』としようか。俺達はこの多目的ルームAに荷物を置いてから、Bを経由して…Cでまた多目的ルームに戻った。んで、荷物が消えてたと…。



うん…そうだよね…



ここで校舎移動トリックが使われたんだ。実はこのC、多目的ルームAじゃなかったんだよ。この時点で俺達は既に…右校舎に移動させられていた。つまり、荷物が消えたーって騒いでた俺達が居たのは、『多目的ルームB』だったんだ…!そりゃあ無くて当然だよね。だって荷物を置いたのは多目的ルームAなのに、俺達がいたのは多目的ルームBなんだから。荷物が消えたんじゃない…俺達が騙されて違う場所にいたってのが実際のところなんだ。



なんで…そんなこと…



「待ってくれ…その理論はわかったが…俺達はどうやって右校舎に移動させられたんだ?ずっと同じ入り口から入って、同じエレベーターに乗ってただろ?移動のしようがない…」 なーに、簡単な理論だよ。俺達が何回も乗っていたエレベーター…あれが『捻じれて』いたんだ。そもそもさ…この校舎の形を見て、疑問に思わない?



校舎の形?



ほら、よく考えてみればさ…エレベーターがあるのは真ん中の一つだけ。なのに校舎は左右に二つ…各階に連絡通路があるとは言え、もしもエレベーターでは左校舎にしか行けないとしたら…あまりにも不便すぎるよね。そんな不便な思いをさせないために、ここのエレベーターは『捻じれる』よう設計されているんだよ。



そんな設計になってたんだ…



さすが椿、その通りだよ。簡易的に図を作ってみた。…急いで書いたから雑なのは許して(笑)見て、左右に操作盤があるよね?ここのエレベーターは、右ボタンを操作すると右側の校舎に…左ボタンを操作すると左側の校舎へ出るよう作られてるんだ。上下に動きながら、同時にゆっくりと回転して出入り口を移動させてね…だから『捻じれて』いる。



そうなんだ…



そもそも円形のエレベーターが珍しいよね。ま、設計者的にはオシャレだったんじゃない?んでさ…峰岸さん。最初はエレベーター右側の操作盤を、次は左側を弄ってましたよね。「なっ…(こいつ…普通記憶してるか!?そんなこと…)」 最初はさ、なんか逆方向に立ってるなー程度にしか思ってなかったんだけど…エレベーターの構造に気づいてはっきりした。あなたがわざわざ逆方向のボタンを操作していたのは、俺達を反対側の校舎へと連れていくためだったんだ。



…じゃあ、反対側に連れていってる間に他の人が貴重品を盗ったってこと?



そういうこと。謎は全て解けた…ってね。俺達が反対側にいる間に、別の実行犯に金品を盗ませる…大がかりすぎたらすぐにバレるから…実行犯は一人か二人だろう。多目的ルームAも実は施錠してなかったんでしょ?まったく、上手くしてやられたよ…俺にかかれば簡単なトリックだったけど。ってことでー…もう逃げられないよ。峰岸センパイ…あんたが犯人だ…!



…本当なんですか?…先輩?



「ぐ…うぅ…ガクッ…そうだ…俺が…俺が指示してやったことだ…金が必要だったんだよ!金が…妹が病気で」 あーストップストップ!その話長くなるでしょ、やめて。「は…?」 俺さ、謎を解くのが好きなんであって犯人の動機とかマジで興味ないの。死ぬほどどーでもいい。だからー…無駄に長い話聞かせないで素直に捕まっててよ。「っ…クソ…!」



ちょっ…さっちゃん!?



冷たいと思う?でも相手は犯罪者だからさ…。これで一件落着、ちゃんちゃーんってね。事後処理は警察に任せるとしてー…あ、盗んだもんはちゃんと返してよ?俺普通に貧民だから金無くなると辛いしさ。返さなかったらー…怖い目に遭っちゃうかもね。なーんて、あは♡んでさー…椿〜。ねーねー、俺の推理カッコよかった?♡



うん!本当にあんな短時間で解決すると思ってなかった!



でしょでしょ?さっちゃんの天才っぷり、理解させちゃったかー。まーあんなガサツなトリック、遅かれ早かれバレてたと思うけど…俺がいなかったらあと数日くらいは延命できてたかもね。妹のため…とか言ってたっけ?真っ当じゃないやり方で金を得たって、逆に家族に迷惑かけるってなんでわからないかなー。椿は賢い子だからそんなこと絶対しないと思うけど…困ったことがあったらー、何でもいつでも相談してね?



ありがとう!困ったことがあったら言うね!



んー、椿はいい子だなぁー♡(椿の頭を撫でる)「ごほん!イチャついてるところ悪いけどさ…その前に、私に何か言うことあるんじゃないの?」 ほ?…えーっと…足すらっとしてて綺麗だね…?「ちーがーうーっ!嬉しいけど!っていうかじろじろ見るな!あのね、あんたの頼みで色々聞いて回ってた訳ですよ?こっちは。礼の一つでも言ったらどーなの!椿もそう思うよね?」



確かに!…鈴子ちゃんの協力がなかったら事件解決しなかったもんね!…鈴子ちゃんありがとう!



あー、普通に忘れてた!でも結局証拠として使わなかったしなぁ…って痛い!叩かないでよ、暴力反対!椿助けて〜…!「椿…あんまり甘やかしちゃいけないタイプだよ、こいつ。絶対調子乗って付けあがるって」 あはー、結構きついこと言うなぁキミ。でも心配ご無用、俺は椿に酷い態度とったりなんて絶対しないもーん。ねー椿♡



うん///信じてるね///



「ぐぬっ…(椿ってば本気で嬉しそうにしてる…)そんな顔されたらなんも反対できないじゃん…まあ、あんたが椿を傷つけないなら別に…口出しするつもりはないよ。でーもー!最低限の礼儀は持ちなさい。ほら!ありがとうございました、は?」 お母さんかってキミは…あーはいはい、ありがとうございましたよー。「よろしい。…椿、何か嫌なことされたらいつでも連絡していいからね?全力で助けに行くから!」



ありがとう!何かあったらすぐに連絡するね!



いやマジで過保護じゃん(笑)安心してよ…俺と椿は既にちょー仲良しっていうか、幼馴染の絆みたいなもんがあるからさ。(ピーポーピーポー…)――お、警察さん来たみたいだね。国家のわんちゃん達ご苦労様ー♡犯人は俺が暴いといたから、後は連行するだけの楽な仕事お願いしまーす。(朝日奈が忌々しげに警察を一瞥する…)



…さっちゃん?



…色々あって、奴らのことは嫌いでさ?あいつらは事件と向き合わない。何よりも大事なものは体裁だし、自分達が孕んでる癌を駆除しようともしない。…それが警察。事件解決のプロ…笑わせるね。俺には可愛い可愛い政府の犬にしか見えないけどなー♡…っと、変な話してごめんね。俺らも少し事情聴取されるだろうけど、ちゃちゃっと終わらせちゃおっか。その後はー…そうだ!俺の家来てよ。つっても隣同士だからあんま意味ないかもだけど(笑)久々に椿とゆっくり話したいんだよね、二人きりでさ…ね?♡



う…うん///



――…【朝日奈の家】さーさー、遠慮せずあがってよ。来るのめっちゃ久々でしょ?ま、俺自身がそもそも十数年ぶりに帰ってきたばっかなんだけど(笑)業者使って手入れだけはしてたみたいだから、中は全然綺麗なんだけどー…うん、やっぱちょっと不思議な感じ。実家なんだけど実家じゃないっていうか…あの頃と違って俺しかいないからね。ま、色々あって結果的に一人暮らしって感じ?
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ