紫月通常

□1日目
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私も紫月と一緒にいたい///



……それ、本気で言ってる?…や…ごめん。疑ってるわけじゃないけど、まさか椿がそう言ってくれるとは思ってなかったから…俺の都合のいい空耳なのかなってちょっと思っちゃった。んー…まだちょっと信じられないな…(むい、と椿の頬を軽く摘まみ)…どう、ちゃんと感覚ある?



何で自分じゃなくて私なの!?



普通俺が自分の頬を摘まむ?まぁまぁ…どっちでも同じでしょ。(むにむに)…うん、そうだな…こうやって触れててもちゃんと温かい椿の体温感じるし、これが現実なんだって俺も分かった。(嬉しそうに微笑み)…っと…そろそろ離してやるか、今よりもっとほっぺ赤くなっちゃうもんな。(ぱっ)あ…そういえばこないだの指先の怪我、大丈夫か?



もう大丈夫そうだよ



それなら良かった。まぁそこまで深く切った訳じゃなさそうだったし、流石にもう傷口は塞がってるか…。(椿の指先をまじまじと見つめ)ん…?ああ、もう血を見ても平気なのかって?大丈夫…さっきも言ったけど、現代の吸血鬼は血飲まなくても全然生きていけるからね。あの時がおかしかっただけ。……多分。…ふ、何…吸われてみたいって思った?(に、と笑い)



そ…そんなことはないよ!?///



冗談だよ、椿に怖かったり痛い思いはさせたくないから。といっても…吸われる方は意外と痛くないみたいだけど。吸血鬼の唾液にはそういう効果があるんだってさ…ホントかどうかは知らない、そもそも吸ったことすらないから。興味も…そんなにない。いや…確かに椿の血の匂いにはかなり惑わされたけど…。(気まずそうに視線を彷徨わせ)



やっぱり気になるのは気になるんだ…



流石にあんなこと何回もあったら困る…色々と。まぁとにかく、普通に生活してる分には椿に迷惑掛けることはないと思うからさ。人間と吸血鬼…生き物としては全然違うけど、接し方とかは今まで通りでいい。っていうか…寧ろあんまり変えないでもらえると助かる。(ぼそ…)……な、なんでって…(〜♪)…あ…?電話……俺か。(スマホを取り出し)



…電話?



…え…親からだ。椿、少しだけ待ってくてれる?(ピッ…)…なに、電話してくるなんて珍しいじゃん。ああ…別に、変わらず元気だけど。…………は?何でそのこと知って――…【数分後】(通話を切り)はー…やっと終わった。椿、待たせてごめん。ちょっと今から俺の家来て欲しいんだけど…いい?



いいけど、どうしたの?



ありがと。話したい事あんだけど、ここじゃちょっと…って思って。んじゃ行こっか。――…【鴻森の部屋】…椿が来るの、こないだぶりか。あの時はまさか2回目があるなんて思ってもなかったけど…まぁこれからは来る機会も多いだろうし、適当にその辺座っててくつろいでて。今飲み物持ってくるから。……つってもうちにはトマトジュース以外は水か炭酸くらいしかないな…どれがいい?



せっかくならトマトジュース飲んでみたい



…ん、りょーかい。すぐ戻ってくる。――…(コトッ)はいどーぞ。……ふ、もしかしてまだちょっとそわそわしてる?気のせいかもしんないけど、そう見えたから。まぁその辺は徐々に慣れてってもらうとして…さっそく本題な。さっき親から電話あったのは知ってると思うけど…その内容が、ダンピールについての事だったんだよな。



ダンピール…



こっちが見えてるんじゃないかってくらいタイムリーだよな…。つい最近遭遇したけど、簡単に追い払ったしなんともなかったとは伝えといた…でもあんまり目立つことして人間に正体がバレたらもっと大変な事になるから、くれぐれも気を付けるようにーって釘刺されて。普段は放置のくせに、一族の存続に関わる事にはうるさいからなー…。(ため息を吐き)



そうなんだ…



数少ない同胞を守るためにはしょうがないんだろーけどな。まぁ…今のこの世の中じゃ、数もそんなに多くないければ力も強くないダンピールに襲われるより、人間たちにバレる方がよっぽど怖いってのは俺でもよーく分かるけど。椿みたいに、事実を知っても尚受け入れてくれるのなんて…めちゃくちゃ稀有な存在だから。



だって紫月は紫月だし…



ありがと。そう言ってもらえると楽になる。…あ…というか俺の親がどこにいるのかって話、そういえばまだしてなかったよな。俺も詳しくは知らないけど…海外の、森の奥深くにいる…らしい。例えばだけど…椿が小さい頃から家の隣に若い夫婦が住んでたとして、それから何十年って経って椿がおばあちゃんになっても、その夫婦だけはずっと見た目変わらないまま暮らしてたら…どう思う?



確かにそう考えると少し不気味かも…



普通に怖いよな。近所でも間違いなく噂になるだろうし。俺たち吸血鬼は…個人差はあるけど、ある一定のところまで成長したらそれ以上見た目が老いなくなるんだって。といっても割と歳行ってそうな外見の吸血鬼も見たことあるし…実際俺がどうなるのかは今は全く分かんない。…できれば俺も、普通にお爺ちゃんになりたいけどね。



そうだね…



そうすれば何十年先だろうと、椿と一緒に居たって変な目で見られないから。うちの親は案の定、20代くらいの見た目で止まっちゃって…あまりに不自然だから、今は誰とも関わらないで済むような場所に居るってわけ。俺が生まれる前も色々あったみたいだし…狙われる心配もないならそっちの方が良いって俺も思うから、遠くにいることに関してはあんま気にしてないけど。



そう思うと大変なとこが多いんだね…



なんだかんだ言って、実質一人暮らしって結構楽なんだよな。…あー…で、一番肝心なのはこれから話すことなんだけど…。キツめに釘刺されたせいもあって、椿の事…ちゃんと親に言えなくて。正体バラしちゃったけど受け入れて貰えて、しかも付き合う事になりましたーなんて、今言ったらどうなるか分かんなかったからさ。でもいつかしっかり報告して、認めてもらうから…それまで待ってて欲しいんだけ、ど…。(伺うように椿の顔を覗き込み)



いいよ!その時が来たらちゃんと両親にも伝えようね



…ありがと。いつか…一緒に挨拶行ってくれたら嬉しい。それから…正体がバレないように学校でも今まで以上に気を付けるけど、もし万が一でもあったら俺だけの問題じゃなくて、椿まで巻き込むことになるし…付き合ってるって事は一応隠しといたほうがいいかもって思うんだけど、椿はそれでもいい?それとも…そんな気遣わないといけない恋人、やだって思う?



そんなことないよ!



良かった…。どうしても、椿の身の安全を一番に考えたいからさ。あ…さっきから弱気なことばっかり言ってるけど、何かあれば俺が絶対に椿を守るって決意は変わってないからね。大事だからこそ…可能性はなるべく潰しておきたいってだけ。……俺、今までこんな風に人に対して心配になったりすることなかったんだけどな〜…誰かさんに影響されたか…?



…私?



…あたり。俺が影響受けそうな人なんて、ひとりしかいないでしょ。(ふわりと笑い)……ん?今の、ぐ〜って音…。ふ…椿、もしかしてお腹空いたの?確かに結構長く話しちゃったもんな。そうだ…それならこのまま家でご飯食べてけば?……あ、いや…椿が作るとまた指切っただとかになりそうだから、大丈夫…。(顔を引きつらせ)こないだの礼も兼ねて、俺が作るよ。……何、意外?



…できるの?



これでも一人暮らし歴長いし、最低限は出来るって。こないだ椿がキッチン使った時も、結構ちゃんと調理器具とか揃ってたでしょ。…つっても、最近買い物行ってなかったからな…あんまり大したものは作れないかも。そういえば…椿は何か好きなものある?大雑把でもいいけど…洋食が好きとか和食が好きとか…中華派、とか…。



うーん…和食が好きかな?



へぇ、そうなんだ…。というか…椿のそういう話聞くの初めてだから、新鮮かも。まーリクエスト聞いてあげられそうなのはまた今度の機会かな。んじゃ、ちょっと待ってて……って、ひとりで俺の部屋に居ても落ち着かないか…。なら…折角だし一緒に作る?…あ、でも……椿は刃物に触るの、禁止で。(真剣な面持ちでずい、と迫り)



うっ…少しならできるよ



ダメったらダメ。…好きな子がケガしたら嫌でしょ、普通。――…【30分後】…ふー…ぱぱっと作った割にはいいんじゃない?二人前ってどのくらい作ればいいのか分かんなかったから、ちょっと量多かったかもしれないけど…ま、いっか。余ったらお弁当にでも回すし。っていうかメインがオムライスって…こんな簡単なので良かった?



うん!すっごく美味しそう!



そう?それなら良かったけど…。…まぁでも…確かに、簡単とか手が込んでるとか、関係ないのかもな。ほら…こないだ椿がお粥作ってくれたでしょ?お粥って結構シンプルではあるけど、こんなに美味しく感じるものなんだな…ってあの時ちょっとびっくりしたから…。今思えば、椿が俺のこと考えて作ってくれたから…だったのかもって…。……な…なーんて、流石にちょっと自意識過剰だったか…はは…。



そりゃ、そのときは紫月のことを思って作ったよ



…ぅ…、ストレートに肯定されると更に照れるんだけど…。や、嬉しいけどさ…。――…んじゃ、いただきます。(ぱく、もぐ…もぐ…)……美味しい?良かった。ひとりで食べる分作ってても張り合いなくてさ、感想もらえるのって嬉しいものなんだな。……これからも食べてよ、椿が幸せそうに食べてるとこ見るの…結構好き。



そう?…じゃあこれからも紫月のご飯食べに行くね



ん、楽しみにしてる。作れるレパートリーも増やさないとな…。――…(カチャカチャ…ザー…キュッ…)…よし片付け終わり。これくらい俺ひとりで大丈夫なのに…手伝ってくれてありがと。……そうだ…デザート、いる?アイスいっぱいストックしてんだよね…平熱が低いせいか、お風呂上りとかちょーっと体温上がるだけで冷たいもの欲しくなるからさ。(ごそごそと冷凍庫を漁り)ん、あったあった…バニラとかチョコとか抹茶…あ、いちごミルクとソーダもある。椿はどれが好き?



じゃあチョコがいい



あー…美味いよな。んじゃ椿はこれね。(アイスを手渡し)…ん、うま…。食後に甘い物食べるの…結構好きなんだよな。こういうこと出来るのも一人暮らしの特権かもしんないけど…。椿のも、おいし?…って…聞くまでもないか…。さっきから顔、緩んでる。……かわいー…。……あ。(はっと口を押さえ)



えっ…///



あー…ほんと、椿といるといつもより口滑る…。…ってか…言っといて俺まで照れてるの、ちょっとダサいな…。でも口には出来るとはいえ、言うこと自体は全然慣れてないし、しょうがな……って…、椿…?俺の上着頭から被って、何してんの…?もしかして…(ばさ、と上着を捲り)…ふは、椿も顔真っ赤じゃん…。なんで…俺に可愛いとか言われるの、いや?



嫌じゃないけど…恥ずかしすぎて…///



やじゃないなら…これからもいっぱい言う。…さっきさ…あんまり今までと接し方変えないでいてくれた方が助かる、って話したでしょ?あれ、いきなり恋人同士ですって感じになると、気持ちに頭が追い付かなくてテンパりそうだなーって思ったから、保身の為にそう言ったんだけど…やっぱりあれ、撤回する。俺のこと…彼氏だって意識しちゃってる椿、すごい可愛いし…もっと見たいから。



うん///



その代わり、俺も椿に全部ありのまま見せるからさ。言っとくけど…俺だって普通にめちゃくちゃ意識してるし、まだ距離感とかくすぐったいし気恥ずかしいけど…そんな事よりも、こうやって照れたりしてる可愛い椿をいっぱい見れる方が嬉しいし。(とん、と椿の肩を押し)…ね…椿はさ、他には何したらもっと俺のこと意識してくれんの。……ふ、ちょっと意地悪な質問だった?



そんなこと言われてもわかんないよ///
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