響 通常

□2日目
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朝――ざけんじゃねぇぞゴミがッ!!(ガシャァン!)



どうしたんですか!?



それより準備しろ。事務所行くぞ。呼びつけられちまってな…急に予定入れられんのマジでむかつくんだよな。まあだが仕方ねぇ、ライブ関連で問題が起きたらしいからよ。俺がいくらスーパーロッカーだからってライブが出来なきゃ意味がねぇ…まずは素直に従ってやる。話の内容によっちゃ全員ぶっ殺すがな。さっさと行くぞ。



は…はい!



【事務所】おら、来てやったぞ阿多巻ぃ…朝から俺を呼びつけるたぁ偉くなったもんだなテメェ。問題だかなんだか知らねえが、呼んだからには納得できるだけの理由があんだろうなオイ。あ?どうでもいいことだったらマジでぶっ殺すからな…椿もなんか言ったれよ、朝っぱらから人呼びつけるこの失礼野郎によ。



何かあったのですか?



お前…ありきたりなこと言いやがって。…おい、何だんまりしてんだよ阿多巻。何か言えや。「…九条くん。今日という今日は私も怒ってますよ…見ての通りプンプンですからね…」 テメェ…ガン飛ばしてんじゃねぇよ、似合ってねーわボケ(ゲシッゲシッ)「あぁっ」



阿多巻さん大丈夫ですか!?



で、問題ってなんだ。さっさと話せ。「実は…この前、ライブ中断になったじゃないですか。あの後で主催者側が九条くんを呼び出してたみたいなんですが…無視されたとご立腹でして…」 呼び出しだぁ?んなもん受けて…あ、さてはあのチェリー野郎か?椿見てギンギンに勃たせてやがった奴…話聞かずに追い返しちまったからな…。



あー…それは…



まあ…椿の刺激が強すぎるのが悪ぃよな。「九条くん、私からの連絡もだいたい無視しますし…それでですね、このままじゃ君だけじゃなくて他の所属アーティスト達にもあのアリーナを使わせないと言ってきてまして…」 あぁ?そいつぁ穏やかじゃねぇな。随分と強気じゃねぇか…俺らのおかげでかなり儲けてるだろうによ、あいつらも。



でも…本当にそうなったら大変ですよね…



この前の事故で客からクレームでも入ったかもしれねぇな…まあ、んなことは日常茶飯事だぜ?ネットやSNSじゃ毎日炎上、殺害予告も当たり前。ははっ、ロックでいいじゃねぇか。万人に受け入れられる音色なんざロックじゃねぇ…俺のロックを批判してえなら、本気で殺すつもりで来てくれねぇとよ。だから止めもしねぇし警察に相談もしねえ。大勢から狂信され、同時に厭われてこそ俺のロックは完成すんだよ。つまり俺から言わせりゃあ、クレーム程度でビビってどうすんだよって話だ。



さすが…かっこいいです!



で、阿多巻よぉ。主催者側の言い分はわかったが…それの何が問題なんだ?「えっ…だって、あのアリーナはこの事務所の顔みたいな会場ですよ?うちのアーティストの大きいライブではほぼあそこしか使ってませんし、色々考慮するとあそこが使えないのは結構致命的と言うか…」 はぁ…違ぇよそうじゃねぇ。なんで使えなくなる前提で考えてんだよダボ野郎が。主催者側が何言ってこようと俺らには関係ねーだろうが…椿、テメェにならその理由…わかるか?



主催者側が使ってくださいと言わざるを得ないような素晴らしい魅力を響様は持っています!



ハズレだ。もっと頭を使え…いいか?そういう時はな、中指立てながらこう言ってやるんだよ…。"うるせえばーか、黙ってアリーナ使わせろや。次のライブで俺が過去最高に客集めてやっからよ…テメェらは指でもしゃぶりながら見てやがれ"…ってな。



私には考え付きもしなかった…さすが響様!



こんだけ自信満々に宣言されたらよ…金とクレーム処理にしか目が行ってねぇ上層部のクソ野郎共も、一回くらいはチャンスをくれてやるかって思うもんだぜ。そもそも俺にはこれまでの実績があるしな。「そ、それは…でも九条くん、過去最高って簡単に言いますが…そんなことどうやって」 決まってんだろ?客が全員メスイキするくらいイかした新曲を作るんだよ。



新曲…



だが、ただ作るだけじゃ意味がねぇ。有効的に使うには戦略が必要だ。つまりよ、作った曲の初出はライブじゃねぇ…ネットだ。途中までを動画サイトで公開する…ライブの告知もセットでな。そうすれば、あのメス共のことだ。俺の新曲を生で聞きたくて自慰が止まらなくなるはずだぜ…ついでにCDの初動を会場での限定販売にすれば完璧だ。チケットは即完売だろうよ



そこまで考えれるなんて凄いです!



なぁに、せいぜい俺に任せとけや。これでも本気でロックやってんだぜ?俺はよ。こんくらいの逆境ですっ転んでるようじゃロックなんて弾けねぇよ。安心しろや阿多巻、大船に乗ったつもりで…いや…お前はもう大船に乗ってるぜ。この俺を捕まえた時点でな…そういうことだ、話は通しとけよ。俺は帰る。まずは作曲だ…とにもかくにも最高の新曲がなきゃ始まらねぇからな。



何か手伝うことはありますか?



椿、お前にも色々と手伝ってもらうからよ。これからバンドメンバーを俺の家に呼ぶ。しばらくは家に籠もって全員で作曲だ…どれくらいかかるかはわからねぇ。一日かもしれねえし、三ヶ月かかるかもしれねぇな。とにかくその間は家から出ねぇから、ギターやベースで使う備品やらも全部お前に買ってきてもらうぞ。あ?楽器のことなんて詳しくねぇってか?仕方ねぇな…後で教えてやるが、自分でも調べとけよ



わかりました!宜しくお願いします!



そうかよ。なら任せたぜ?――…【九条自宅】ピンポーン…お、あいつら来たみてぇだな。椿、ちょっと玄関出てこい…俺は地下スタジオで準備してるからよ、連れて来てくれ。(…ガチャ) 「ちょり〜っす☆ビッキーはろはろー…ってあれ?なんか可愛い子ちゃんがいる!ねぇ君、もしかしてビッキーの新しいセフレ?へぇ〜ほぉ〜ジロジロ…めっちゃ可愛いじゃーん…♡俺、貫颯太(ぬきそうた)っていうんだ。よろしくね?☆」



はじめまして!椿です!



(貫の後ろから巨大な人影がぬるりと現れる…)「……」 「あ、こいつは浅倉仙司(あさくらせんじ)。背でっかくてビビるよね、わかる。無口で全然喋らないけど、感情は搭載されてるから安心して☆ほら仙司〜挨拶くらいはちゃんとしよーよ?」 「…………」 「…はい!自己紹介も無事に済んだところで〜とりあえずスタジオ行こっか?ほらほらゴーゴー!」



はい!行きましょう!



…揃ったか。適当に座れ。状況は把握してるよな?今の俺達には最強の新曲が必要だ。当然、これまでも最高のもんを作り続けてきたけどよ…今回は更にレベルがたけぇもんを作って、一線を画さなきゃならねぇってことだ。先に言っとくが簡単じゃねぇ…が、出来ないとも全く思わねぇ。俺達なら成し遂げられる…そうだろ? 「とーぜん!」 「……コクリ」



凄い…



それに、戦うのは俺達だけじゃねぇからな。椿…こいつにも色々と手伝ってもらう。お前達も椿を自由に頼れ…本来なら駄目だが今回に限って許してやるよ。別に嫌がらせでこき使えって言ってんじゃねぇぞ?意識を作曲に集中させるためだ。ま、要するに雑用ってことだが…頼りにしてるぜ?椿。



はい!がんばります!



よーし、それじゃあ気合入れていくぞ。文句付けて来やがった馬鹿共に見せつけてやろうぜ…俺達のチームワークってやつをよ!――…【一時間後】だ、か、らッ!そこは歪ませねぇと意味ねぇっつってんだろうが!!「はぁ〜やだやだ、何でもかんでもすぐ歪みって…ベースラインは輪郭が大事なんだよ?音ぼやけちゃうじゃん!」 テメェのベースはクリーンすぎんだよ、全然ロックじゃねぇ!!一回死んでみるか?あぁッ!?「……(無言で椅子の高さを調節している)」



ち…チームワークとは…?



あーそうかよはいはいテメェがそういう態度ならこっちにも考えがあんだよテメェまじでテメェ殺すテメェ。「も〜メェメェメェメェうるさいな!!ヤギかって!!こんなんじゃ集中できないじゃんよ!」「……」(ジャーンッ…ドゥンドゥンドドッ、タッタタタ…) うわビビった…んだよ仙司、急にビート刻みやがって。「……」 あ?一回合わせてみよう?…まあ口論してても始まらねぇしな。音でぶつかり合った方がいいか…椿、流しでやってみるからちょっと聞いとけ。



わかりました!



(三人の演奏が始まる…)――…っと…まあ…20点ってところか。ゴミだな。「……」「見事に普通だったねー」 ま、大した土台もねぇ状態でやってもここらが限界だろ。普通のバンドならこの程度でも十分に商品レベルだろうがよ、俺達にとっちゃ普通なんてクソも同然だ。さーてどっから手付けたもんか…改善点だらけで頭いてぇわ。けど最高にロックって感じだぜ。「うわ〜ドMだなビッキーは」



…お茶でも準備してこようかな



こうやって曲を仕上げてく過程が楽しいんだろうが。そりゃあ苛つくこともあるけどよ、これが楽しくなきゃアーティストなんてやってらんねーぞ?…そうだ、お前らもたまには自分だけで作曲してみろよ。生みの苦しみってのがよーくわかって俺への感謝が深まるぜ。椿もどうだ?



私ですか!?



お、その反応はもうノリ気だな。その内俺がみっちり教えてやるよ。とにかく今は土台作りだ。どんな曲だろうが基礎をしっかり組み立てておかねぇことには始まらねぇ。ここをどれだけきっちりやれるかで曲の完成度が決まると言っても過言じゃねぇからよ…じっくりいくぞ。よし、まずは頭の部分からだ――



はい!



【一週間後・夜】ん、もうこんな時間か…お前らは先に休んどけ。俺は…もう少し残るわ。曲のディテールを詰めてぇからよ。「え、俺達もまだ残るよ?」 ディティール詰めるっつってんだろ、お前らがいてもやれることねーって。ほら、素直に寝とけや。「へいへーいわかったよ。おやすみー」「……」 ほら、お前も休んでろ椿。行った行った。――…【深夜】(地下スタジオの明かりがつきっぱなしになっている…)



お疲れさまです…差し入れですけどどうですか?



…お前か。まだ寝てなかったんだな。寝れねえのか?それとも…もし俺に気ぃ使って起きてんなら、無理に合わせる必要はねぇぞ。前も言ったけどよ、奴隷を理不尽にこき使うのは主人のやることじゃねぇからな。ちゃんと美味いもん食わせて、睡眠もしっかり取らせる。それが上に立つ者の義務ってもんだ。まあ…とは言え、ちょうど気分転換したかったところだしよ。ここにいるってんなら少し付き合え。



はい!
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