道慈 通常

□3日目
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んじゃ、この辺は買いだな。――ふぅ、そろそろ腹減ったな…。どうだ?椿…飯、食わねぇか?考えてもみりゃ、昼頃に出てきて、全く飯を食ってなかったしな…。ここならフードコートとかあるだろうしよ、どうだ?



そう言われたらお腹すいてきたかも…フードコートに行ってみようか



よし、んじゃ食いに行くぜ。結構色んな飯屋があるじゃあねぇか。俺一人でこういう場所に来ると、さっさと食い終わる蕎麦とかで済ませちまうが…今日は椿と一緒だしな。折角だから、椿、何を食うか選んでくれよ。



せっかくならガッツリ定食とかにしてみる?



定食か?はは、わかってるな。…良いじゃねぇか。――っと、来たな。んじゃ、食っちまうか…ん…んむ…ん…美味ぇ。しかし、こうして動き回ってみたが、特に奴等の動きはねぇみてぇだな…ま、無いに越したこともねぇんだがよ。ははっ、何年ぶりだろうなぁ…こうして、心おきなく誰かと店なんざ回ったのはよ。



そうなんだ…少しでもゆっくりできたならよかった!



ありがとうな。これからも、こういうことが出来ると良いよな。今日買った本も、映画も楽しみだぜ…次のデートで椿が着てくれるであろう服も、な♡こうやって未来に楽しみを見出すことが出来るのも、椿のお陰なんだよな…俺も、椿にそういうものを与えてやれれば良いんだが。



もう十分すぎるほどもらってるから大丈夫だよ!



そうか?…ははっ、ありがとうな…♡――んむ…んぐ……っはぁ!美味かったな。椿と一緒に食ったから美味かったってことなのかもな…別に、誰かと一緒に食う事と、飯の味に因果関係なんざねぇんだけどよ…なんつーか、『椿と一緒に食ったから美味かった』って思いこめると、それだけで幸せだなって思うぜ…この感覚、分かるか?



うん!好きな人と一緒にご飯食べるって幸せなことだよね!



そうか…俺は幸せモンだな…。椿にも同じくらいの幸せ、分けてやらねぇとな…。んじゃそろそろ出るか。無理に成果が出るまで動き回ることもねぇしな…。今日はもう戻って、汗でも流そうぜ。――楽しかったぜ、ありがとな♡



私も楽しかったよ!



さて…意外と良い時間だったな。中にいると気付かなかったがよ、結構暗くなってんな…。そろそろ、俺みてぇな連中が動き始める時間だな…椿、気をつけろよ?――っと、あん…?なんだ、あの車…真っ直ぐこっちに来て……ッ!椿下がれ!(車が目の前で止まり、椿を中に引き込もうとする)――テメェら!芸がねぇな…同じ轍踏むわけねぇだろうが!椿!掴まれ……っう…クソッ…肩が…!



道慈!?大丈夫!?



ぐぅっ…鎮まれ、俺の肩っ…!!「待て!!いたぞっ!!」くっ…椿、逃げるぞ!!ダダダダッ…はぁ、はぁっ…。やっぱ、夜になると気が抜けねぇな…。あいつら、俺を張ってたのか……。このままじゃまずい。とりあえず、どこか身を隠せる場所に避難するぞ。



うん!



はぁ…はぁ…クソッ…隠れる場所がこんなビルの隙間しかねぇのか…。ここに留まっていても見つかるのは時間の問題…椿、立てるか?このビルの隙間を縫って移動するしかない。俺が前を歩く。椿は俺の手をちゃんと握って後を付いてくるんだ…いいな?



わかった!



ああ、しっかり握っていろよ。……こっちの道もダメか。メンツ的にあまりこういう時に頼りたくはないが…下の奴らに目くらまし役として動いてもらうしかないな。pipi…pi…ああ、俺だ。今…って……だ。頼む。pi…いいか、今から応援が来る。場所も指定しておいた。その反対側に向かう。いいな?



うん!わかった!



この辺りで待機していれば大丈夫だろう。……始まったみたいだ。物音を立てるなよ?…よし、大丈夫だ。「若頭ぁ!よかった…ご無事で…」すまねぇ…、迷惑かけたな。「とんでもねぇです!道を確保しておいたんでそこへ向かってくだせぇ!」ああ。椿、行くぞ。



うん!ありがとう



「若頭…肩から血が…」――ああ、クソ…。さっきので傷が開いたみてぇだな…浅いとはいえ、まだ一昨日だからな…動脈をやられただけだから、見た目ほど酷くはねぇが…動きに支障がねぇとはいかねぇな…。――一先ず状況の整理だ。車の陰から一瞬見えたが、一昨日の連中みてぇだ…前は四人だったが、今回は何人で動いているやら…。で、今回の俺等の目標だが…。



どうするの?



奴等の生け捕りだ。そして、サツに突き飛ばす。はぁ…狙い通りなんだが、俺自身が油断しちまうとは、情けねぇ…。――で、だ、突き飛ばす為に、正当防衛である必要がある…基本的にチャカ使うんじゃねぇぞ?――だがまあ、万が一もあり得る…そん時はお前らに関しちゃ、自分の命優先しろ。どうしようもねぇ時は何したって構わねぇ…。良いな?



何か凄いことになってきた



俺のこたぁ、気にすんな。――さて…生け捕りに当たって、どうするかだな…。見ての通り、今の俺に正面から喧嘩売りにいく余力はねぇ…。奴等も前の例があっから、警戒してるだろうしな…。――ふむ…これで行くか。おい、佐久間。「へい?何でしょう?」椿引っ張って、逃げろ…後で街外れの倉庫で落ち合うぞ。「うっす!…でも、若頭はどうするんです…?」それはな…こうする(佐久間にとあるモノを渡す)――「なるほど…。古典的ですが、奴等、引っ掛かりますかね?」



私が手伝うことある?



椿は逃げてりゃいい。――「んじゃ、椿さん…。こっちです。若頭ほど頼りにゃならんかも知れませんが、俺も漢です!いざとなったら身体張って守りやすからね!…っと、若頭の狙い通りだ…追ってきましたぜ!」――(八馬へと連絡を入れる)「…若頭!連中の誘導、何とかなりそうですぜ!後で必ず落ち合うっす!」『よくやってくれた…こっちも問題なさそうだぜぇ…。椿は大丈夫そうか?』「椿さん、声聞かせてやってくだせぇ」



大丈夫だよ!心配してくれてありがとう



『おう、椿…無事だな?俺は今、佐久間が誘導している間に別ルートから、街外れの倉庫に移動している…。不意打ちでもねぇ限り、佐久間の野郎もヘマはしねぇ筈だ…捕まらねぇことを祈ってるぜ』――「若頭!…っと、横から失礼しますぜ。そろそろ例の倉庫に到着します」『俺ももうそろそろ到着する…首尾良く頼んだぜ…!』――「さあ、到着っす!」



ついた!



――さて、あいつら…上手くやってくれると良いが…。「――へへ、自分から袋の鼠になってくれるとは…助かるぜぇ?鬼虎の若頭よぉ」「前は不覚を取ったが、今回はもう油断はしねぇ(銃を構える)」「…へへ…俺のこと本当に若頭だと思ってたんすか?」「…!?――こいつ、若頭じゃねぇぞ!!」「へへ!若頭の上着、借りてただけなんすけどねぇ…不意打って無理矢理に誘拐しようとしたら、顔見る余裕もないっすよねぇ」「くそ!じゃあ…あの野郎は何処に…!?」――こっちだ、馬鹿共が。オラァ!!(物陰に潜んでいた八馬が相手に襲い掛かる)



道慈!?



…ふぅ。椿、怖い目に合わせちまったな。これで、華獣の連中は生け捕りに出来た…後は組長に報告してから、サツに突き飛ばすだけだ。…ッ、たく、負傷してんのに無理するモンじゃねぇな…。何にせよ、椿が無事で良かったぜ…。



助けてくれてありがとう…帰ったら傷の手当てしようね?



ああ…。さて、この中に鬼虎の裏切りモンがいる筈だが…。(おかしい…それらしい顔は見当たらねぇ)――おい、テメェら…今回動いていたのはこの四人だけなのか?鬼虎のモンから、何か唆されたんじゃあねぇのか?今言っときゃあ、鬼虎の方でソイツをシメるだけで済む…華獣の組長もさぞやぶちギレるだろうなぁ…勝手に動いた上に、別の組の連中に加担するなんてよ…。「……くそ…そうだよ…俺達は鬼虎の連中に『成果を挙げて上にあがりたくねぇか?』と交渉を持ちかけられた…」そうかよ…。椿、どうやら予想通りみてぇだぜ?



…本当にそうだったんだ



おう、大した推理だったぜ…流石だ、椿。さて、問題はここからだが…っと、椿は少し退屈だよな?後で纏めて話してやるからな…吐かせるだけ吐かしてやりてぇ…あんまり、尋問の様子も見せたくねぇからよ…外でちょっと佐久間と待っててな?――(中から時折、悲鳴が聞こえてくる)――ふぅ…終わったぜ。尋問ってのも気分の良いモンじゃあねぇな…。



…大丈夫?



大丈夫だ…ありがとうな、椿…気を遣ってくれてよ…。まあ、収穫は多かったぜ。組長にも連絡を入れておいたし…ここからはサツの仕事だ。こっちはチャカ向けられてたわけだしな…奴等も怪我さえ治りゃピンピンだろうし、過剰防衛にゃならねぇだろ…。まあ、奴等から聞いた話は家に戻ったら聞かせてやる。佐久間も突然、悪かったな…「へへ、若頭と椿さんの役に立てたのなら光栄ですぜ折角だから俺もカッコいいとこ見せたかったすけど…」――調子に乗んな(ペシッ)



ふふっ…佐久間さんも十分かっこよかったよ!守ってくれてありがとう!



――(佐久間と別れて)さて…今日も疲れたな…。こんな感じの生活が…まあ、ずっとってわけじゃあねぇが、時々はある。ははっ、椿みたいにカタギの女じゃあ、身体がいくつあっても足りねぇかもな!……冗談だ。今日はよく無事でいてくれたぜ…本当によく頑張ったな、椿…(ナデナデ)



道慈や佐久間さんたちのおかげだよ///私は結局逃げ回るしかしなかったし///



よしよし…本当に可愛いやつだな、お前は…♡家帰ったらご褒美やらねぇとな…なんか美味いモン食わせてやるからな。それとも、ベッド、行きてぇか…?♡…ははっ、んな体力はねぇか!――っと鬼虎のヤツがいるな…?この辺りはもうシマから外れてると思うんだが…。おう、お前…何して――(組員に近付いた八馬が、不意に倒れ伏す)…なるほど、な…テメェが…組の…裏切りモン…か。



…え?…道慈!?



「しぶとい奴…若頭ぁ…いや、八馬ぁ…。俺ぁ、アンタのやり方にはついていけねぇ…。あんたが上に立ってから、鬼虎も随分と落ち着いちまった…俺みてぇなゴロツキにゃあ、前みたいな荒んだ空気の方が似合ってたってのに…。佐久間の野郎に落とし前ツケなかったのも、アンタの判断だろ…?俺ぁ、アンタのヤーさんらしからねぇ態度がどうしても、気に入らなかった……って、もう聞こえてねぇか?ま…ナイフぶっ刺さてるしなぁ――おい、そこの女!」



…は…はい!



「そうだ、テメェだ…中々、良いツラしてんじゃねぇか…。テメェ、命惜しけりゃ…こっち来いよ。抱いてやっからよ…この道にに入るからにゃあ、相応の身分ってのを教え込んでやらねぇとなぁ…」――鬼虎の末端に、人の女に手を出すような下種がいたとはなぁ…。「……あ?…て、テメェ…!」



…ど…道慈?



死んだ筈じゃ、とか言わねぇよな?はぁ…末端の連中も鍛え直しが要るな…。さて、しかし深々と刺さってんな…これ。こりゃ立派な状況証拠になる…。まさか、一日で二回もサツの世話になるだなんて思いもしなかったぜ…。「テメェ…不死身なのかよ…」――あ?んなワケねぇだろ…センスもねぇのに冗談はやめろ。こりゃ、テメェが手を出そうとした女――椿のお陰だ。



…私!?



どういうことか分からねぇか?テメェらを誘き出す為にさっきしていたデート…俺達は最初に本屋に行ったんだ。そん時に、椿と読む約束をした本があってよ…。すぐ取り出せる様、懐に仕舞っといたんだ。…ってか、血も出てねぇし、感触も生身と全然違ぇんだから、殺り損なってることくらい気付け…だから、テメェは三下なんだ…よ!(ナイフのグリップ部分で組員を殴りつけ、鎮める)



…じゃあ本当に怪我してないの?



大丈夫だ。椿とデートしてなかったら、死んでたかも知れねぇし、本当にありがとうな…。今日はもう、流石にこれ以上、何かあることはねぇだろうから安心してくれ…。――正直、コイツに関しては予想していた節もあったからな…。華獣の証言も合わせて、今回、これ以上の人間は絡んじゃいねぇ筈だ…。――――よし、組長への連絡も済んだ。コイツもサツに突きだす…それで、平穏な夜だ。



よかった



――さて、ようやく家に着いたな…。暫く、ここまで密度が濃くなることはない…と思いてぇな。流石の俺でも疲れたぜ…。前世でどんな業を積めば、三日以内に銃で撃たれてナイフで刺されて、なんてことになるんだろうな…。いや、椿の方が疲れているよな。慣れてもいねぇ状況でこんだけ色々あればよ…飯、簡単なモンなら作るぜ?何が食いてぇんだ?それか、椿が作ってくれるってんでも良いんだぜ…?
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