刀剣乱舞 長編
□白刃の輝き
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「…長谷部?…それは何?」
「傷薬ですよ主」
怪我をした楓のためにとへし切長谷部は真っ黒で変な臭いがする何かを容器に入れて持ってきた。
「…それ…どうやって使うの?」
「…傷口に塗ればいいのですよ」
へし切長谷部は笑って言うが楓は苦笑いする。
「いや…もう血も止まってるし、痛くないから大丈夫だよ…気持ちだけ受けとるよ」
その薬を見て恐怖が生まれた楓は後ずさる。
「何を言っているのですか?きちんと治さないと大変なことになりますよ…幸い毒は使用されてなかったみたいなのでこれだけで大丈夫ですよ」
(…その『これ』が怖いんだよ)
「…さぁ…腕を出して下さい」
有無を言わさず準備をするへし切長谷部に楓は嫌々腕を出す。
(大丈夫…あれはこの時代の消毒薬…怖くない怖くない)
楓は自分に暗示をかけるようにして心の中で呟く。
へし切長谷部は匙で黒い薬を掬う。
(…来る…来る…来るぅぅぅ!)
「やっぱり恐いよぉぉぉ!」
恐怖に負けた楓は叫びながら逃亡する。
「主!?」
逃亡すると思っていなかったへし切長谷部は驚くがその間に楓は姿を消したのだった。
「長谷部…ごめんなさい…やっぱり怖いです」
逃げ切った楓はため息をつきながら廊下を歩く。
その時曲がり角から誰かが出てきて楓とぶつかる。
「うわっ!?」
楓が転けそうになるところを誰かが支える。
「…ありがとうございます」
ぶつかったのは山姥切国広だった。
「主がこんな何もない所で何してんだ?」
(…消毒から逃げてきた…何て言えない)
「…散歩してた…国広は?」
「俺は…考え事してた」
山姥切国広は楓を見たあと俯いて呟く。
「…何であの時俺なんかを助けた?」
「…え?」
突然振られた話に楓は聞き返す。
「俺は霊山山姥切の写しだ…俺の代わりなんていくらでもいる…でも…あんたの代わりはいない…それが分かったら2度とあんな真似はするな」
「…え?…それってどういう…」
山姥切国広はそう言うと楓の戸惑いを気にせず去っていく。
(…霊山山姥切の写しって…真似して作られたってこと?…それに代わりなんていくらでもいるって)
山姥切国広の暗い顔が頭から離れず楓はしばらくその場に立ち尽くすのだった。