短編
□歌に形はないけれど
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「元親ー!」
「時雨か?…どうした?」
朝から時雨は元親を大声で呼ぶ。
手にはオルゴールらしきものが握られている。
(…なんか…嫌な予感がする…)
そんな元親の思いは的中する。
「これ、大好きな曲のオルゴールなんだけど壊れたから直して」
「修理に出せよ」
やはりという思いでため息をつく。
「えー!修理に出したらお金がかか…元親に直してもらった方が大事にしようって思えるからさ」
「今、ぜってぇ金の事をきにしてただろぅが!」
「え?俺に任せろだって?…さすが元親!大好き!」
「おい!そんなこと言って…待ちやがれ!」
時雨はオルゴールを元親に押しつけると全力疾走で逃げていく。
それを見た元親は重いため息をつく。
しかし、そんな時雨のために直そうとするのはひとえに好きだからだろう…
(…あいつ、本当に嬉しがるからな)
元親は時雨の笑顔を思い浮かべると1人微笑んだ。
(…さてと…何の曲なのかから始めねえとな…)
元親はそうして長い道のりでオルゴールを直していくのだった。