君に届けばいいと思う 番外編
□小鳥は親鳥の羽の大きさを知っている
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注意
↓
・本文がここまで来ていないのに一年と絡まるという無謀さ。
・##NAME1##が女の子だと言うのはばれてます。
・きり丸過去捏造。ほのぼのには絶対になりそうにはないが、ほのぼのだと言い張る(当社比)
おk?
ちまちまと小物を作っていく。
ここに来てから一週間。学園長のご厚意に甘え、俺はこの五年長屋に居候をさせてもらっている。
学費を払ったのは四年分までだし、いくら事務の手伝いや食堂のおばちゃんの手伝いをしているからといっても、こんなご時世だ。日に三度の食事だって、馬鹿にならない出費だと俺は知っている。
汗水流して手に入れたお金を、学費として払い、それを使って俺が生活をするのは絶対に違うだろう。
そう思って始めたことだったが、意外と性に合う。
室町で生きていた時、俺はカツカツの予算を少しでも増やすべく、裏山から切り出した木や竹で小物類を作っていたこともあり、比較的早く完成し、小山を作っていく。
「せーんぱいって、もうこんなに作ったんですか?」
「あぁ、きり丸か」
ひょこ、と障子の向こうから頭を出した後輩に小さく笑って、そうか?と尋ねた。
「##NAME1##先輩って、見た目によらず器用ですねー」
作った物で形成された小山の横でしゃがみこみ、一つを拾って眺めるきり丸が目を輝かせる。
「はは…そうか?」
それは木彫りの親鳥と子供の姿。
見ていたきり丸の瞳が、どことなく悲しそうで、思わず##NAME1##は声をかけてしまった。
「…きり丸?」
「………親、って、どんな存在なんでしょうか?」
ぽつりと呟かれた言葉を、きり丸がどんな表情で言っているのかは、生憎と##NAME1##ときり丸の身長差では分からなかった。
「……おいで」
##NAME1##が両腕を広げた。
しかしきり丸が動かないのを見て、##NAME1##はそっと寄って、両腕で抱き寄せた。
「……##NAME1##、せんぱい」
「うん」
「……俺は、不幸ですか?」
「ううん」
「……俺は、“かわいそう”ですか?」
「ううん」
「……おれ、は…」
「…きり丸。俺は、お前を養えないから、家族になるとは言えないよ。
でも、でもね。どうしても、耐えきれなくなったらおいで。俺と一緒に寝よう。…な?」
「……はい…!」
腕の中のきり丸の位置を調整して、ぱた、と後ろに倒れこむ。
キャー、と嬉しそうな声を上げるきり丸に、##NAME1##は良かったと笑った。
外は綺麗な赤に染まっていて、部屋には暖かい風と共に日差しが入ってきている。
もうすぐで夕飯だからと、きっと兵助か乱太郎が呼びに来るだろうと高をくくり、そのまま少しばかり遅い昼寝を始めた。
小鳥は親鳥の羽の大きさを知っている
「きり丸」
「?何?」
「世界は、綺麗だと思うか?」
「…思うよ。だって、##NAME1##先輩と出会えたんだ!」
その庇護下から、いつか飛び出し、自分の羽で守るのだと。
雛にも満たぬ卵は呟いた。
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〜2014/06/08
だいぶ遅くなってしまって申し訳ありませんでした!