いつか書きたい小ネタ


◆手を伸ばして追いかけて 

手を伸ばして追いかけて、それでも掴めない時、皆の反応。


五年

雷蔵
手を伸ばして追いかけて、それでも掴めなかったその背中。いつの間にか大きくなって、広くなってた。
縋りついて泣いた時もあったね。足を挫いた君を僕が負ぶって帰った時もある。
いつの間に、君は僕を越したのだろうね。
あぁ、僕の足はもう使い物にならないから、君の役には立てない事はわかってるよ。だから、ここで待ってるから。
お帰りを、言わせておくれ。


八左ヱ門
手を伸ばして追いかけて、それでも掴めないその背中を、俺はいつの間に諦めたんだろうか。
遠くて遠くて大きくて。
一年の差はあまりにも広くて。遠くて。
見る間に遠くなっていく背中に、手を伸ばしても届かなくて、声をかける事も躊躇った。
あぁ、あなたの隣にいたかったんです。あなたに守られるのではなくて。
あなたの、背中で戦いたかったんです。


兵助
手を伸ばして追いかけて、それでも掴めない。
もうボロボロで、俺はもう走れなくて。
ねぇ、ねぇ。
きっと君は「助けて」と言えば助けてくれるだろうね。「止まって」と言えば止まってくれるだろうね。
でもね、それじゃぁ嫌なんだ。
でもね、君の足手まといには成りたくないんだ。
だからね、ごめん。さよならだ。


勘右衛門
手を伸ばして追いかけて、それでも掴めない。あぁ悔しいなと俺は一層足に力を込めた。
君に、追いつきたいんだ。
どんなに不格好でもいい。
君と一緒の世界が見たいんだ。
だからさ、でもね?君はそのまま走ってておくれよ。君が俺を待っててくれればきっとすぐに追いつくけれど、それじゃぁ意味がないから。
待ってて。今、追いつくから。


三郎
手を伸ばして追いかけて、それでも掴めない。
人の命とは、こんなに儚い物だったか。
両の手に乗った、友のいた証はいやに軽かった。血が流れて、顔面は蒼白で、だらりと宙にゆれる腕が、悲しかった。
私を、置いて行かないと言ったじゃにか。
そうつぶやいても、応える声はついぞ無かった。

2014/06/26(Thu) 22:23

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