不死鳥の宿り木

□三枝
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【S級決勝戦】


正直自分は何も知らされていないと、圭は答えた。
晋司は昨日からずっと寝たままだ。大怪我のまま走り回ったせいで体へのダメージが大きい。


「トーナメントで何か企んでることは分かったんです」

「でもその何かが分からないのね」

「とりあえず僕がトーナメントに参加すると、トーナメントがシャッフルされるのである程度邪魔になるんじゃないかと」

「だから反対を押し切って出たのね」

「はい。初戦で負けましたけど、トーナメントシャッフルと僕が参加者になることで先生たちの目を向けようと思って」


圭がもし参加者でなかったとしたら。学園祭の観戦は任意である。つまり休日でもある。
そう、休日の生徒に教師が構うことはないのだ。
そうすると何が起こるか。恐らく圭が何も出来ないように閉じ込められていただろう。
しかし圭が参加者になったことで、圭がいなくなると騒ぎになるので手出しが出来なくなった。それを狙ったのだという。


「そうしたらシンくん焦ったんだ。もしかしたら、最初から今回のことは従う気が無かったのかもしれない。今回失敗したら、勝手なことをした僕に何かあるかもしれないと思ったのかも」


晋司は今まで以上に悩んでいた。どんなことを言われたのか。晋司は教えてくれなかった。


「監視を振り切ったことを考えると、一人で何かしようとしていたのかもしれないわね」

「だってシンくん、わざと大怪我しました。黒凪くんの攻撃をわざとモロに受けました。何考えてるんだろう…」

「………聞いた話では、晋司くんは決勝戦に出場しなければならなかったそうよ」

「はい。それは聞いてました。だから審判も、三田先生になるように…でも三田先生と連絡が取れなくなったって聞いて、終わらせるって言って、それで、」

「つまり、わざと大怪我をして負けて、決勝に進まなかったということね」


晋司は決勝戦に出なければならなかった。でも、それをしなかった。
苗崎が三田を捕まえて連絡がとれなくなって、咄嗟に取った行動とも思える。
もしかして、それをチャンスだと思った?


「あの、蒼の仮面なら、宇津海が何をしたのか知ってますよね。シンくん、気づいてました。僕も。準決勝が黒凪くんだと分かってあの行動に出たように思えます」

「焔羅くんだったからあの行動に出たと言いたいのね?」

「はい。そうだと思います」


話がややこしくなってきた。もしかして焔羅の両親の事件と関係があったりするのだろうか。
しかし圭の話はあくまで予想である。晋司が起きるまで結局決勝で何が起こるはずだったのかは分からないのだ。
ただ、晋司が決勝にでなかったことですでに宇津海の計画は頓挫している可能性が高い。

朱美は今の話を他の隊にも共有することにした。
計画が頓挫して終わりならそれにこしたことはない。
怖いのは、犯人がヤケになることだ。



******


試合開始からもうすぐ一時間。


「はあ、はあ、だらああああああ!」

「うおっ!?」


完全にキャラが変わった淳が最後の力を振り絞って特大の竜巻を起こした。
フィールド全体を巻き込んで吹き荒れるそれに、翔の足が浮いた。


「どこにそんな力残ってたんだよ!」


宙に浮いた翔が脚に魔力をこめると、炎が噴き出した。
炎の魔力で体勢を保ちつつ、風の刃から身を守る。
制限時間も少ない。ドカンと一発入れないと翔が判定負けの可能性もある。


「我が呼び掛けに応えよ!汝は火の精ーーーーサラマンダー!!!」

「四大精霊!?!?」


上級精霊の召喚に会場が沸いた。
炎の球が現れる。精霊の姿は見えないが召喚には成功していた。
四大精霊の召喚は、精霊のクラスに関わらず高難易度である。
四大精霊は基本姿を現すことはない。例え召喚に応じてもである。

凄まじい勢いの炎が竜巻を飲み込んだ。淳の風の魔力を焼き付くし、消えた。
そして翔が何も言うことなく、サラマンダーも消えた。一瞬のことであった。

荒く息を吐く淳がその場に倒れ込んだ。魔力切れである。
審判が旗を上げた。



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