yellowprince

□側にいて…
2ページ/2ページ

それからも俺は、稽古に集中できたが、相変わらず 玉はまだ 忙しくしている。ドラマの撮影も佳境に入っているのか、1.2時間 練習しては、撮影に戻る という日々を 一週間以上 続けている。さすがに、見ているこっちも辛くなってくる。そんな過酷な中でも、玉は 笑顔を絶やさず 共演者達とコミュニケーションを取り続けている。表では、気力を振り絞り平然としているが、裏では、今にも倒れそうな状態にいる。少しでも頼ってくれればいいのに、千にも気を使っているのが分かる。そんな玉の力に どうしてもなりたかった。千は、少しでも 玉の負担がなくなるよう、いつも側にいて、出来る限りのことはした。とにかく、玉のために千は何でもした。玉の 心の支えになれれば… と思っていたから……

いつものように稽古をしていると T『ガッちゃん、明日やっとドラマの撮影終わるんだよ』 S『ホントか? 長かったな』 T『うん。でも、これで やっと舞台に集中できるよ。ガッちゃん、色々ありがとね。もう大丈夫だから』と言った。そう言われて、千は悲しくなった。
別に、玉に 見返りを求めてる訳ではない。千が勝手に 玉のことを想ってやっているのだから、そんなことを思ってはいけない。ただ、突き放されたようで、そのことが悲しかった。

それからの玉は、とてつもない集中力で、どんどん役柄を自分のモノにしていった。皆との関係も、以前より深まっていた。そんな玉を見ていると、玉が離れていくようで寂しくもあった。その一方で、玉のことが解るにつれ、益々 惹かれていく自分もいた。S(玉にとって俺は、もう 必要ないんだろうか… 少しでも役に立てていたのだろうか…) そんなコトをずっと考えていた。

本番も近付いたある日、いつもより元気がない玉がいた。 S『玉、どうした?』 T『ガッちゃん!』と ビックリしている。 S『何 ビックリしてんだよ〜』 T『いや…』 S『もうすぐ本番だな。玉なら大丈夫だよ』と言うと T『… 大丈夫なんかじゃないよ……』 S『えっ?』 T『本当は、大丈夫なんかじゃないよ… 不安で不安でしょうがないんだよ…』 S『玉…?』
T『オレ、ガッちゃんに ゙もう大丈夫" って言ったよね』 S『ああ』 T『でも、本当は あの時も 大丈夫なんかじゃなかった…』 S『じゃあ、どうして…』 T『だって… これ以上、ガッちゃんに迷惑かけられない って思ったから…』 S『迷惑って…』 T『ガッちゃん、ずっとオレの側にいてくれて、オレの為に色々してくれたよね…』 S『ああ』 T『オレ、ガッちゃんが側にいてくれて 凄く嬉しくて… だから どんどん甘えていって… でも、よく考えてみたら、ガッちゃんに迷惑ばかりかけてるな って思って… だから…』 S『玉、俺は 迷惑だなんて一度も思ったことないよ。玉のためなら、何だってしてあげたいし、何だって出来る自信あるよ…』 T『ガッちゃん…』と涙ぐんでいる。S『玉は どうしてほしいの?』 T『ガッちゃんに、側にいて欲しい… ずっといつまでも…』と言うと 泣いてしまった。そんな玉が愛おしくなり、千は 力一杯抱き締める。 S『俺は、玉の側にいるよ。 ずーっといるよ。玉が イヤだ って言うまで…』
T『ホント? ずっとオレの側にいてくれる?』 S『ああ、約束する』 T『ガッちゃん… オレから離れないで…』 S『うん… 玉も 俺から離れるなよ』 T『うん……』

約1ヶ月の舞台も、誰一人ケガもなく、無事 大成功を収めた。あんなに不安がっていた玉も、堂々として輝いていた。 S『玉、よく頑張ったな』 T『うん。ガッちゃんが いつも側にいてくれたから…』と顔を赤らめて言う。S(相変わらず 可愛いよね…) 千は、玉の唇にキスをした。玉は、耳まで真っ赤にしている。 S『玉〜 これからどうする?』 T『一緒にいたい…』 S『俺も…… じゃあ、俺の家 行く?』 T『う、うん…』 S『決まり!』 まだ赤くなっている玉の耳元で 『朝まで寝かせないからね』と言う。すると、恥ずかしさの余り 座り込んでしまった。そんな玉を見て思わず笑ってしまった。 S『もー 可愛すぎ』と ギュッと抱き締める。2人の周りだけが輝いていた。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ