Song of the love to give you who are red

□高級車の中の寝心地は。
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「そういえば、夕飯は…」
ぐー
「まだみたいだね?」
「うぅっ…」
悲しきかな、体は正直なのです。はい、私のお腹がなりました。
「今日はシチューとサラダ、か。それも一人分だな。まぁ、今日は客人を呼ぶとも言ってなかったし仕方ないか」
「えっと、ホームヘルパーさんを雇ってるんですか?」
「ああ。この広い家となると、一人では大変でね」
たしかに大変そうだ。でも、だからこんなに広い家なのに掃除が行き届いてるんだと埃ひとつ落ちていない床を見て思う。ていうかこの人かなりのお金持ちってことになるよね。
「外食にするか」
「え、悪いですよっ!私、そんなにお金持ってないし…」
「それくらい出すさ。ああ、お酒は飲めるかい?」
「飲めますけど、」
「じゃ、行こう」
手招きをされるものだから従わないなんてこともできなくてそのまま高級そうな車に乗った。思った以上に走りが静かで車の中なのにすごく落ち着ける。
「赤司さんは社会人ですよね」
「ああ」
「お仕事は何をされてるんですか?」
「本職は棋士だが、ある会社の特別取締役もしている」
ある会社を聞いてみれば十人が十人聞いたことがあるというような大手会社の名前を出された。どうりでお金持ちのはずだ。ていうかものすごいお偉いさんだ。今更ながら緊張する。
「着いたよ」という声で車は止まり彼に続くように車から出た。そこはやはり高そうなお店で私はまるで親鳥について歩く雛だ。
「あのっ」
「なんだ?」
「私、そんなにお金持ってないですよ?」
「さっきも言っただろう、それくらい出すさ」
「や、でも…」
「俺が誘ったんだ、出させてくれ」
「……はい」
ずるい。こんな断ることができない言い方。なにも返せない私は結局ごちそうになってしまった。
「おいしかったかい?」
「はい!すごく美味しくてほんとにほっぺが落ちちゃいそうでしたっ」
「それは良かった。ワインは少し強めだったが大丈夫か?」
「そうなんですか?でもワインもとても美味しかったです!」
「ああ。いいものだったな」
「…私、このまま赤司さんの家に住みたいなぁ〜」
「毎日は外食させてやれないぞ?」
そう言って笑った赤司さんはほんとにステキでキラキラと輝いているようにも見えた。あぁ、頭がぼーっとするなぁ。
「それでもいいから…多分、一人は寂しいです」
小さく思ったことを呟いた。
「…このまま住んでもかまないぞ」
「え…?」
少し酔いがさめた。え?このまま住んでもって…。多分誰から見ても馬鹿みたいな顔をした私の手を引いて車に乗せるといつの間に呼んだのだろう運転席にはまるで執事のようなおじいさんがいて赤司さんは反対側から私の隣に座った。
「あ、あのっ、さっきの話…」
「明日は大学?」
「え、あ…はい」
「そう。それなら寝てもいい。目が眠そうにしている」
そう言われるとまるで催眠術のようにまぶたがおちていった。なんだろう、疲れたのかな?今日一日でいろいろあったし、お酒も飲んだし、ねむ……。






「お優しいですね」
「面白そうな者だったから拾っただけだ」
「左様でございますか」
「……(一人は寂しい、か。)」








〈高級車の中の寝心地は。〉

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