Song of the love to give you who are red

□それはノーカンで。
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ばたんとドアの閉まる音がしてなんとなく息を吐き出した。
やっぱり無意識のうちに息が詰まってたみたいだ。そういえば、何気なくここに帰ってきていいと言われたんだけれど甘えてしまっていいのだろうか。掻き込むようにして食べたあと、白い皿を洗いながら考える。普通なら全然知らない人の家に泊まるなんて駄目だろう。いや、知ってる人でも男の人だったら駄目か。赤司さんは昨日出会ったばかりの知らない男の人だ。昨日は何もなかったけれどもしかしたらそういう目的もあるのかもしれない。
そう考えて私は頭をぶんぶんとふった。単純だとは思うが泣いている私に優しくしてくれた彼がそんな人だとは考えたくない。
先程まで寝ていた部屋に戻ると鏡に等身大の自分がうつっていた。私は彼が用意してくれた衣服に身を包んでいてなんだか不思議な気分。黒いキャミソールに白い少し胸元の空いたシャツ。ショートパンツは短すぎず長すぎず…なんで全部サイズあってるんだろう。ピッタリすぎるんだけど。
「…気にしないようにしよう」
少し早いけどここを出ようと鞄と赤司さんがくれた鍵をもって出掛ける。しっかり鍵をかけることを忘れずにね!
いつもより少し遠い駅から大学へ向かうと昨日一緒に食事にいくはずだった友人、古川梨紗に会えた。
「ごめんごめんっ!昨日急にお母さんが入院したとかでさ」
「え!?大丈夫なの?」
「おー、骨折だってさ」
「わー…お大事に。私の方は気にしなくていいよ。そのおかげであいつの浮気が分かったし!」
「え、何、杉浦 恭浮気してたの?あちゃー、アホだねあいつ。かっこいいけど…それは駄目だわぁ〜」
「うん、だからあいつと別れられて良かったよ、ほんと」
「へー…で、昨日はホテルにでも泊まったの?」
「えっ?あ、ああ…えっと、」
どういったものかといいあぐねていると梨紗の目がきらーんと光った。
「何、何どーしたの??」
「えっとね…」
だんまりが通るとも思えないから梨紗にだけはすべて話すことにした。少しやけになってた部分もあるから、意外という顔をして聞いていたがききおわるとすごい笑顔だった。
「そのまま住んじゃえばいいんじゃない?」
「いやいやいや…」
「だって話からするとめっちゃイケメンなんでしょ?それに紳士的だし。いい物件じゃない?」
「人を物みたいに…。でもさ、昨日知り合った人だよ?迷惑かもだし」
「でも裸みられたんでしょ?」
「ちょっ…それはノーカンでしょ!?」
顔があつくなるのを感じつつ梨紗を叩こうとしたがそれをひらりとかわし、ニヤニヤと笑っている。くそぉ…。
「んじゃ、ま、部屋は探しつつさ出てけって言われるまでいろいろとゆっくり考えたらいいんじゃない?」
「…うん、そうしようかな」
一度甘えてしまったのだからこの際もう少し甘えさせて貰おう。赤司さんとはまだ少し緊張しつつも結構楽しんで一緒にいられてる気がするし。昨日も赤司さんに言ったけどやっぱ一人は寂しいと思うし。
スッキリして赤司さんと目の前の友人に感謝をした。









〈それはノーカンで。〉

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