Song of the love to give you who are red

□見えたのは大きな褐色の手。
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「鈴っ…!」
「近づかないで」
「聞いてくれ、 鈴!」
「うるさいっ!私はなにも話すことなんてない、行こう赤司さん」
いつのまにか一歩後ろに退いていた赤司さんの方を向く。
「いいのか?」
「はい」
背中に視線を感じながらもずんずんと歩いた。少し息苦しくなるくらいに足早に。
黒い高級車の前まで来てから赤司さんを置いてきてしまったかもしれないと後ろをふりかえった。
「どうした?」
そこには息切れしてる私とは対照的に少しも息を乱さずこちらをみる赤司さんがいた。赤司さんの目は何を考えているのかわからなかったけれど、やっぱり私には暖かそうに見えてそれまで目いっぱいにたまっていた涙があふれた。
一度流れてしまうと止めることなんかできなくて、ああ、赤司さんには泣き顔ばっかり見られてるなぁなんて思った。
赤司さんはそんな私の頭をぽんぽんと優しくたたくと背中に手を添えて車に乗せてくれた。気をつかってくれたのか先程歩いてきた道を通らないようにゆっくり遠回りをして道路にでた。
「赤司さん、ごめんなさい」
「俺は気にしてないよ。 鈴は大丈夫?」
「も、大丈夫です。なんだか私、赤司さんに泣きついてばっかりですね…」
そう言うと彼は小さく笑ってそうかもね、と言った。
「でも俺はうれしいけどね」
「えっ?」
「頼ってくれてるってことだろう?」
どうしてそんなに優しいの…。こわなに迷惑かけてるのに。
赤司さんの言葉は私のことを全部見透かしてるようでそれが何となく心地よくて、最後にひとしずくだけ涙が頬をすべった。
















次の日になって私はアパート探しに出た。
理由日はもちろん赤司さんの家から出ていくため。どうしてかってきかれると困るけど、いっぱい迷惑かけちゃったし…。はじめは出てけっていわれるまでなんて考えてたけど、その時は自棄になってたし冷静になって考えてみるとほんとあり得ないことしてるって思ったし。なにより、私みたいな人が赤司さんの近くにいてはダメな気がする。
優しすぎて、すごすぎて、私が近くにいるにはもったいなくて、苦しい。
「きゃっ!!?」
ぼーっと歩いているといきなり後ろから来た人にぶつかられて鞄をとられた。
…鞄をとられた…?
「ひ、ひったくりっ!?!だ、だれかっ…!」
ぶつかられた時の衝撃で尻餅をつきながら叫ぶ。その声もむなしく回りにはあまり人はいなくてひったくり犯はどんどん離れていく。
うそでしょ…財布とかも入ってるのにっ!
ぐっと立ち上がって自分で追いかけてやろうとしたところで誰かが私の頭の上にぽんと手をおいた。
「ったく…せっかくの休みの日だっつうーのについてねぇ」
そう聞こえたかと思うと私の頭の上から手が離れた。








〈見えたのは大きな褐色の手。〉

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