Song of the love to give you who are red

□幸せの涙。
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(12話までの赤司side)



面白そうな人を拾った。
いつもは誰もいない公園で一人、ベンチに座った女の子にどうしてかひかれていった。
珍しく電車通勤をしたその日はいつもとは違ったことに気分がよく、公園の中に足を進めた。一言声をかけると彼女は泣いた。今までにない反応だったから少し驚いた。
今までは話しかけると、尊敬の目、恐れの目、憎悪の目、あとはあこがれ、恋の目だった。
彼女は目いっぱいに涙をためたものだった。





それから彼女は家にきた。
それも俺にとっては意外な選択だった。知らない男の、それも惚れた様子でもないのに家に来るなんて。
そういう女なのかとも思ったが行動を見ていてもそういう様子はない。しかも俺の目の前で寝るなんていう全く俺を男として意識していない行動。それには少しむきになって、と言うとおかしいかもしれないがいたずらしてやった。まぁ、着替えさせてやっただけでそれ以外は特になにもしていないのだが。
次の日は彼女が夕食を作ってくれた。昼間の忙しいときにメールがきたから一言しか返せなかったが大丈夫だろうか、と考えているといつのまにか家についていてそこにはまた寝ている彼女がいた。
テーブルに並べられた料理の中には湯豆腐もしっかり入っていて、俺が帰ってくるまで待っていてくれた彼女と一緒に食べた。
湯豆腐がいつもより美味しく感じた気がした。



どうしてだろうと考えた。
興味本意で拾った。それは事実だ。
ならばどうして彼女といると自然と笑顔が出てしまうのだろう。








出掛けている間に考えてなんとなくわかった。多分、俺は彼女に興味以上の感情が出てきたのだ。
どうしてかはわからない。気がついたらそうなっていたとしかいいようがないと思う。




一人の男にあった。
彼女の言葉からしてあの日、出会った日に話していた男だと気づいた。彼女は見たくもないようで、足早に車の方へとむかっていった。一瞬だけ男と目があってすぐにそらされた。
俺は彼女を傷つけたことに怒りを感じながらも、同時に今、彼女の隣にいるのが自分であることに優越感を感じた。
彼女はまた泣いた。本当はあの男のことがまだ好きだからなのか、単に傷ついたことを思い出したからなのかは分からなかったが頼られていることにうれしくなった。












その次の日、黒子からメールが届いた。
棋士の方の仕事だったため、先生と呼ぶ人との会話を中断して車に乗ってから見ると彼女を家まで送っている途中らしかった。
どうしてそうなったのか利いてみると、アパート探しをしていた彼女がひったくりにあい、それを青峰が助けたらしくついでに、と送っているらしかった。
アパート探し?出ようとしているということか?それにひったくりなんて…帰ってきたら話すことがたくさんあるな。












「苦しいんですっ…」
俺だって苦しいよ。お前が隣にいなくなってしまうのは。
夢だというなら覚めなければいい。覚めさせない。
隣にいてほしい。
ずっと近くにいたのにやっと捕まえられた気がした。いや、俺の方が捕まったのかもしれないが…なんでもいい、彼女がいるなら。
いつからこんなに溺れていたんだろうな。
きっと出会ったときから引かれるものがあったんだろう。
好きだといって目を閉じた彼女の頬を伝ったそれは俺と出会って4度目のもの。
きっとそれは幸せなものだと思って______________








「好きだよ」














〈幸せの涙。〉

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