Song of the love to give you who are red

□愛情のベクトル。
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講義を終えてバッグにペンケースをいれてるところに一人の女の人がきた。
「桐島 鈴さんですよね?」
「あなたは…あの時の、」
そう、私がキレたときそこにいた子。恭の浮気相手っていえばいいのかな?今、どうなってるのかは知らないけど。
「あなたどういうつもりなんですか?」
「はい?」
「私、恭さんにあなたのことがすきだからと言われて関係を切られたんです」
「はぁ…」
「っ…でもあなた昨日他の男の人と帰ってましたよね?」
「まぁ、はい」
「どれだけ私のことを馬鹿にすれば気がすむんですかっ!?」
あの時と同じキイキイ声で叫ばれるけど私はもう別れてるし、そのあとのことでなにか言われる筋合いはない。それに元から横入りしてきたのはそっちでしょ。そう言おうと思ったが、頬の痛みで思考が停止した。じんじんと痛む頬に自分のてをあてると冷たくて気持ちよかった。
「なにするの…」
「なにやってんだ!」
私の呟きは後ろから聞こえてきた声に消された。
「っ…恭さん」
「こいつはなにも悪くない!手ぇだすな」
好きだった声に肩をゆらすと女の子は目に一杯涙をためて走っていった。二人になると沈黙ができて、いたたまれなさに私も歩き出そうとする。
「まってくれ」
「なに?」
「少し、話がしたいんだ」




その言葉に悩んだけれどいつまでもそのままにしておくのも嫌だったから応じることにした。
「まずは、本当にごめん。悪かった。謝ってすむとは思ってないけどそれでも謝らせてくれ」
「私も、急に飛び出してっちゃったし…」
「いまは、あの人と付き合ってるのか?」
「、うん」
「スゲーかっこよかったもんな。いい人そうだったし」
「あんただって、キャンパス内で騒がれるくらいかっこいいくせに…」
「それはおまえもだろ?」
「…あのさ、なんでああいうことしたの?」
そう言うと恭はどこか寂しそうな顔をした。
「お前さ、俺のこと好きだった?」
「…うん」
「そっか。じゃあ、ごめんな。…俺、お前からそういう感情読めなかったんだよ。そりゃ一緒にいたら嬉しそうにしてたし、デートだってうれしいって言ってくれてたけどさ、なんか違ったんだ。告白したのも一緒に住もうって言ったのもおれだったしさ、不安だったっていうか…」
「ご、めん。私、」
「謝んなって!むしろ悪いのは俺だし。なに言おうが浮気したんだからさ。すっげー後悔してるよ、こんないいやつなのにって」
「そんなこと、ないよ…」
「あるんだよ。…じゃ、あの人と仲良くやれよ?」
「うん…ありがとう」



遠のいていく今日の姿はにじんでいた。
恭と話して分かったのは、きっと恭のこと大切だと思ってはいたけど愛情は持っていなかったこと。あの日泣いたのは信じていた人に裏切られたようで傷ついたからだ。でも、だから赤司さんへの思いが膨らんだんだと思う。それに恭もあの女の子もいなかったら赤司さんとは会えなかったんだ。




だからせめて最後の言葉くらいは守ろう。
それがわたしが伝えられる最大限の恭への感謝の気持ちだ。









〈愛情のベクトル。〉

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