長編 薄桜鬼

□三章
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「私はやっぱり役立たず、か…。迷惑なんてかけたくないのに…。」
「うん、そうだね。何にもしないで君の見張りをしてないといけないなんて、すごく迷惑だなぁ。」
私の部屋の中の呟きを外にいた人物が皮肉っぽく返す。
「お、沖田さん…すみません。」
もちらん私が言い返すなんてできずに謝るとスッとふすまを開けて入ってきた。
「うん、じゃあ面白いことして?」
「…はい?」
「ずっと外で君の見張りなんてつまらないでしょ。だったらここで君に面白いことしてもらったほうが楽しいもん。」
「もんって……。」
そんなこと言われても…あ!
「絵でもかきますか?」
「んー…君がかいてるのを見ることにするよ。」
「えぇっ…そんなの見てても面白くないですよ!?」
「いいから。」
ほら、はやくと急かされて私は渋々ながらスケッチブックと鉛筆を取り出した。
「…これは?」
スケッチブックと鉛筆を興味深げに眺める沖田さんは何となくかわいく感じられた。
「えっと、これは…私がいたところの紙と筆のような物です。」
「へぇー…。」
じっくりといろんな角度から見たあとぽいっと投げ捨てるように渡される。「わっ!」
「ずいぶんと固そうだけど…紙も丈夫だから破れないんだ?」
観察力はさすが…。
沖田さんの視線に急かされるようにして鉛筆をスケッチブックに滑らせる。
「何をかくの?」
「その、沖田さんを…。」
「僕?まぁ、いいけど。」
「あ、ありがとうございます。」
輪郭をかいてまず髪をかく。茶の混じった少しだけ癖のある…。
「…沖田さん」
「なに?」
「沖田さんと近藤さんって同じ髪型ですか?」
「!よくわかったね。」
「よく似合ってます、ね。」
「…君、ナマイキ。斬っちゃうよ?」
「ご、ごめんなさい!」
ハッとなって謝ると沖田さんはクスクス笑って「冗談だよ。」と言った。そのあどけなさの残る笑顔がかわいくて鉛筆を動かす手のスピードが自然とあがった。
「か、完成、です」
そういうと沖田さんは私の正面からくるりと後ろに回って絵をのぞきこむ。
「これ…。」
絵の中の沖田さんは先程のように笑っていた。
「だから途中から僕の方見てなかったんだね。」
「頭に焼き付いたので…。」
「そうなんだ?じゃあこれ貰ってくね。」
「えっ?」
「頭に焼き付いてるならいらないでしょ?」
そう言って絵を手に取ると部屋を出ていってしまった。
「……。」
沖田さんってもっと恐い人だと思ってたかも…。すぐ斬るって言うし。でも、またあの笑顔は見たいかな、なんて。



「総司ー!ん?なんだそれ。」
「平助か…これは 夢羽ちゃんにかいてもらったやつだよ。」
「へー…ってすげ!!めっちゃ似てるし!」
「でしょ?」
「つーか、総司楽しそうだな。そんなにかいてもらうのが楽しかったのか?」
「いや、別に?」
「ふーん?ま、いいや。次はたしか俺が見張りだったし、行くか…。」
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