短編

□悪態
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「今日、音也は?」
「ロケで帰ってきません。」
「あ、そ。」
「はい。」

ここはトキヤたちの部屋。
トキヤに「久しぶりの休日なんだから来なさい」と連行された。でも特にすることもなくソファの上でぼぉーっとしている。トキヤはトキヤで後ろのトキヤ専用の机で読書中。
…なにがしてぇんだよ、こいつは。
少しするとトキヤは本を閉じて後ろから腕を回してきた。

「なんじゃい。」
「なんでもありません。」
「………はなせ。」
「嫌です。」
「ええぃっ!はなせっ。」
「どこの悪役ですか。」
「……。で、何?」
「何でもないです。ただ、すごくいとおしくて。」
「鳥肌のたつこと言うんじゃねぇよ。」

そう言うとトキヤはいきなり耳にふぅっと息を吹きかけてきた。

「っ…やめんかい。」
「貴方が悪態をつくときは貴方が照れているときですね。」
「おい。」
「と、いうことは貴方のその悪態は一種の愛情表現ということですね。」
「おーい。」
「なんですか?」
「貴様は馬鹿か?」
「さっそく愛情表現ですか。嬉しいですよ。」
「うわぁ…キモい。」
「照れているところも可愛らしいですね。」
「ダメだ…こいつ、無敵だ。」
「今さら気づいたんですか。」
「今さらすぎた。しまった。」
「そんなぬけてるところも可愛らしいです。」
「やぁーめぇーろぉー…てかはなせっ。」
「今日は音也が帰ってこないのでゆっくりできますね。」
「うん、まぁあのうるさいのがいないのはいいけど、いい加減この腕がうっとうしい。」
「自分の腕の中におさめてみるといつもより小さく感じますね。」
「ケンカ売ってんのか?おら。」
「全てがいとおしく私を狂わせていきます。」
「お前もう既に狂ってるよ。私と会話できてねぇもん。」
「貴方の一言一言さえも形にしてとっておきたいくらいに好きです。」
「おおぅ…変態がいた。ってか私の言葉をそんなに大切にしたいなら今から言うこと耳かっぽじってよーくききやがれ。」








「大好きで狂っちゃうほどトキヤのこと愛してるからいい加減この腕離しやがれコンチキショー。」

べしべしとトキヤの腕を叩きながら言う。トキヤはわたしのうしろにいるからどんな顔してるのかみれないけど黙り混んでいる。沈黙が続いてその間も腕は回されたまま。

「おーい。」
「私も愛しています。…だから離しません。」

さっきよりもぎゅっと力を込められた腕。私は暴れたけどすぐに諦めた。そしてトキヤの言う通り私の悪態は照れ隠しかもしれないと思った。
頬が熱くなったことを感じながら…。











END

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