DRRR!!

□離れたくない
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もう春だってのに寒い夜。俺とシズちゃんは二人手を繋いで帰っていた。
俺とシズちゃんは付き合っている。
何故かと聞かれると話すと長くなるので此処では割愛する。でも、シズちゃんと付き合えるようになったのは本当にびっくりしたし、嬉しかった。
俺たちがこんな事をしているなんて学校の皆は知らない、いつもいる新羅もドタチンもだ。
だから一緒に下校して、学校から少し離れた所から手を繋ぐ事にしている。でも俺達もいいお年頃で、恋人がいたら色々してみたいと思ってしまうのだ。
手を繋ぐだけじゃなくって、もっとシズちゃんの温もりを感じたい。
キスくらいしたい。
そう。キス…くらい。

「…じゃあな、臨也。」
「うん。ばいばい。」
またこの言葉で俺とシズちゃんが離れてしまうのか。いつもの事なのに今日は何故かシズちゃんが遠くなってしまうような気がして。
俺はシズちゃんのブレザーの袖を掴んだ。
「…?い、臨也?」
「……ちゃ…だ…」
「あ?何だよ聞こえねぇ。」
何だか恥ずかしくなってやけになってしまった。
「っ…だからっ‼…行っちゃやだって言ってんの‼一回で聞けよ!!!馬鹿っ!!!」
普段そんな事言わない俺にびっくりしたのだろう。シズちゃんは、きょとんと言う効果音が鳴るかのように目を丸くしていた。シズちゃんは、そのまま直立不動で反応しない。
「…何か言ってよ。」
ピュアなシズちゃんにそんな事言った俺が悪かった。
「…やっぱ今のなし。送ってくれてありがとう。…じゃ」
シズちゃんに背を向けて家へと向かおうとしたその時。
「…臨也っ!!!」
不意にかけられた呼び掛けに反射的に振り向くと俺の視界には、水色のブレザーと白いシャツ。シズちゃんの香りが一気に濃くなった所で抱きしめられる事に気が付く。
「…⁈、シっシズちゃん⁈…何してっ…」
「…行っちゃ嫌なんだろ。それに、今離すと手前、どっか行っちまいそうだったから。」
っは。さすがシズちゃんだ。やっぱり俺の予想の斜め上をいく。
「…俺は…何処にも行かない。シズちゃんの隣りに…しかいない。」
そう言うとさっきよりもシズちゃんのが近付いて唇にふわっと何かが触れた。それがキスと気づくのには、少し時間がかかった。
「…っふ。」
唇が離れるとまたシズちゃんが抱きしめてくれた。
「…ねぇ、シズちゃん。」
「あ?」
「俺達、ずっと一緒に居れるよね。」
「当たり前だろ。ってか手前変な奴に絡まれんじゃねーぞ。手前は何やらかすか分かんねぇからな。」
「はぁっ⁈何それ⁈シズちゃんには俺がどう見えてんの?」
「…っせぇな。今ので察しろよ。」
「は⁇…なにを。」

そう言って俺の耳元で呟いた言葉は忘れられない。

死ぬまで守らせろクソノミ蟲

シズちゃんからの精一杯の愛の言葉。ぶっきらぼうなその言葉は
俺の中で響き続けた。

「…帰るぞ。」
「…うん。」

まだ顔の赤い二人はまた手を繋いで夜の道を歩いて行った。
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