長編小説

□銀色の魂 第一章
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「ハッ…!」



ガバッと大きく目を見開いて、勢いよく身を起こす。

頭が混乱していてうまく状況が掴めない。
なんとかして状況を掴もうと辺りを見回す。
見知った天井、見知った部屋、見知ったにおい。

窓の向こうで今日の一日の始まりをつげる太陽の光がさし、元気よく小鳥たちが鳴いている。

いつもの朝だ。

だんだんと頭が冴えてきて、落ち着きを取り戻す。
溜まった不安を取り除くかのように大きくひとつ深呼吸をする。

「夢か…」

下に視線を向けると、無意識に布団を強く握り締めている自分の白い手があった。
それを認識した瞬間、体の神経が今になって戻ってきた。
手の中はじっとりと汗で蒸れて、布団にそのあたたかさが残っている。
手の甲で額を滑らせれば、尋常じゃない汗が溢れていることに気がついた。

たかが夢ごときで…

なさけねェと自分に苦笑する。

「またまァ随分と、昔の夢をみたな…」

歳はとりたくねェもんだ


窓から差し込む太陽の光が眩しい。
天気がいいようだ。

また、一日が始まる。

ふと自分の体の汗を見て、気恥ずかしくなり頭を掻いた。

「風呂はいってくるか」



太陽が差し込む光の中で、かつての師をみたような気がした。
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