名探偵コナン コ哀中学生編Story

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Story4 入学式で目立ちたい彼は





オレは体育館へと進む列を待ち伏せして、灰原の手首を掴んだ。

「みっけ♪」

「へっ?」

あどけない声を出す灰原を、ぐいっとこちらへ引き寄せる。

「え、江戸川君? ちょ、私列から外れちゃったじゃない…」

不安そうな表情を浮かべる彼女に、オレはにやっと笑いかける。

「オレ、実は新入生代表の言葉言うんだよな」

「ああ…私あれ断ったのよ。だから列に戻させてくれる?」

冷たくあしらう灰原の前で、オレはニカッと笑った。

「で、本当はもう一人、代表がいたはずなんだけどな。実はそいつ、今日休んじまって」

「……。悪いことを企んでいる顔ね。私はパスよ、頑張って」

肩をすくめて列に戻ろうとする灰原の腕を、オレはパシッと掴む。

「放してくれる?」

「やだね、だってお前逃げるじゃん」

「一人でカッコ良くセリフ言えばいいでしょう?」

「ぜってー楽しいから、オレはお前を誘ってんの」


本当なら灰原と同じように、オレだってめんどくさがって断っていたはずだ。

オレの実年齢が12歳のころだったら、代表なんて絶対断っていた。

でも、オレは決めたんだよ。

二回目の中学校生活、めちゃめちゃ楽しんでやるって。


…それも、一人で楽しむのではない。

組織の監視の元で、中学校生活を全く楽しめなかったであろうコイツも、絶対楽しませてやるんだ。

だから、灰原も巻き込むんだよ。


「ぜってー楽しいぜ?」

「……好きにすれば」

オレの考えを読みとったのだろうか。

灰原から許可が下りた。

「好きにさせてもらいますよ」

オレはまた笑って、列の最後尾が見えなくなった所でダッと走り出した。

灰原の手を握って、な。






『えー、次は新入生代表の言葉です。代表の江戸川君、お願いします。……………あれ、江戸川君? 江戸川、どこ行った?』

校長がキョロキョロしてオレを探している。

「こんな状況で入っていくの? 絶対嫌よ…」

「大丈夫、オレがなんとかすっから。責任もとるし」

後ろの入り口から体育館を覗くオレたち。

今にも泣きそうな表情を浮かべる灰原は、なんだか妙にかわいく見える。

『江戸川、江戸川? 出てこい!!』

親や生徒も、ざわつき始めた。

よし、そろそろいい感じかな?

「行くぜ、灰原っ」

「……ガキ」

颯爽とスケボーに飛び乗り、広い体育館を疾風のごとく走りぬく。

「あ、コナン君に哀ちゃん!!」

歩美ちゃんの声に、オレはにっこりピース♪

「やっほー」

「ピースなんてしてる場合じゃないわよ!!」

……怒られました。

「新一、なにしてるんだい…」

父さんの声が聞こえる。

「かわいい女の子乗せちゃって、やるぅ♪ いいわよ、新ちゃん!!」

母さんは乗りがいいぜ!!

「調子のってないで、早く止めてよ!!」

……また、怒られました。

仕方ないので、同乗している灰原の言うことを聞くことにする。

「よっと…」

スケボーに乗ったまま、高い舞台上へとジャンプ。

ガタンという大きな音と共に、見事に俺たちは着地した。

「かっけぇ…」

そんな声が生徒から聞こえてくる。

「だろっ!? 格好良かっただろ!?」

「調子乗らないでくれる?」

ギロッとこちらを睨む灰原は、顔がりんご以上に真っ赤だった。

「こんな怖いアトラクション、初めてよ」

「楽しかったろ?」

ぷいっとそっぽを向く灰原。

何も答えられないのは、灰原が素直じゃねーってだけなんだよな。

証拠にほら、隠してるつもりだろうけど顔が真っ赤だし。

(かわいい…)

舞台下から小さな声が聞こえてくる。

……昔はかわいくねぇなーとか思ってたのに、いつからこんな顔できるようになったんだろう。

結構一緒にいたのに、何でだろうな。

全然、気づかなかった。


『君たち……なにしてくれたんだい…?』


……ああ、気づかなかったさ。

このあと、こっぴどく叱られたよ、ちくしょー!

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