□花火
3ページ/4ページ

高杉はいつものように俺の頭を撫でて、中にいれてくれた。
六日間。
俺は一度も無線機を使わなかった。
というより、俺は目立った行動を一切せず、ただ毎日高杉腕の中で寝起きして、大人しく二人ですごしていた。
そして七日目。
俺は六日間断じてさぼっていたわけではない。
単純にあいつが一人になることがなかっただけ。
そうだ。だって、迷いなんか、もう捨てたんだから。
高杉を殺していいのは俺だけ。
俺だけなんだ
七日目、おとずれたチャンス。
高杉の方からアジトの外へ呼び出しがかかった。
安全なアジトからわざわざ離れたところで二人っきりで。
俺にとっての願ってもいない絶好の機会だということも知らず
その先に真選組の隊士が待ち構えてることも知らず

「クククっ・・来たか」

今宵すべてが終わる。
俺があれほどまでに羨望したこの人の人生は俺の手で華々しく散っていく。
それで・・良い。

「高杉さん、何で俺が仕事に行かないのか・・・聞かないんですかぃ?」

決して俯かず、堂々と高杉の顔を仰ぎみて俺は聞く。
一瞬でも長くこの人を目に映しておきたい。そう思って。瞬きをする間も惜しかった。

「んぁ?何でって・・そりゃぁ知ってるからだ」

「え・・?」

「てめぇが何でここにいるかなんざ、とうの昔に察しがついてるよ」

高杉はそこで一端俺を見ると、呆然とする俺にふっと笑った。

「俺」を殺しにきたんだろ?」

世界が逆転したかに思えた。

足がふらつく。
立っていられない。

「わかって・・いたんですかぃ?」

「あぁ」

短い返事に俺は高杉が全て理解していたことに気づいた。もう逃げられないことも、自分に死の宣告が下されていることも。
この人はわかっていた。
わかっていて、敢えて俺と最後まで一緒にいることを選んだ?

そんな・・そんなことって・・

「わかっていて、俺を傍においていた・・何で?」


次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ