□RETURN
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早く帰って来いと言われた。 だから…

「さ、がるっ……」

帰らなければ。

とっくに夜の帳は下りて
辺りには人の影もなく、静かだった。

慣れた屯所の騒音が時々幻聴として俺の耳を犯す。
いつも五月蝿い五月蝿いとは漏らしていたがその逆も…落ち着けるものではなかった。

冷たいアスファルトにうつ伏せに倒れこむ。

動けない。
動かない。

肩から流れ出る血が容赦なく俺の体温を奪っていく。
「クソッ……寒い」




帰らないと。







もう大分遅いのだろう。脳が麻痺して、どれだけ時間がたったのかわからないが。

きっと山崎は心配している。

俺の帰りが遅いのを心配して
きっと馬鹿みたいにそこら中歩き回って…もしかしたら、ミントンにも手がつかなくなるくらいに。

嗚咽が漏れた。馬鹿な姿を想像して面白くて笑っているはずなのに涙がでる。
頭に思い描く山崎は常に笑っていて…本当に馬鹿な奴だ。



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