□君のためなら2
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真っ暗。

真っ暗。

まるで暗闇に溺れていくよう。


いつになれば終わりはくるのだろうか。






がばり、と布団を跳ね上げる。


「はあっ……はあっ…………夢?」


ベッドの上で頭を振る。少し頭がスッキリした。
見回せばまだ見慣れぬ学園の寮。

光がカーテンの隙間から溢れていた。
学園に来て二日目。
今日から学校へ、懐かしいB組へ行くこととなる。




「はーい!みなさんこのクラスの新しいお友達 を二人紹介します。 みんな仲良くしてねー。」


クラスに入って、俺は気付いた。佐倉蜜柑が転入してくるまでのこの空白の時間を知らないということを。


「…………乃木流架です。」

「……日向棗。」


淡白すぎる挨拶に教室が沈黙に包まれた後、ざわつきだす。主に恰好いいだとか可愛いだとか。

おい、誰だ。俺に可愛い等と言った奴は。


「流架君、棗くーん。二人共恰好いいわね! 私が二人のファンクラブ会長をしてあげるわ!」

「…………。」

「…………。」


パーマはパーマだった。 いや、幼いB組メンバーは可愛いと感じるが。 棗は存在そのものを無視していた。
俺は一応パーマには曖昧に笑っておく。キャーッと騒がれた。

俺とは逆にふてぶてしい棗。周りに対して警戒し過ぎな気もしなくもない。

そこに名も知らない女の子が俺に近付いた。


「流架君、かっこいいね! 私のぞみって言うの。よろしく。」

「うん。よろしく。」


格好いいなんて初めて言われた。いい子だ。 可愛がってあげよう。


「流架君は何のアリスは?」

「…………動物には好かれやすい、かな。」

「そうなんだあ!いいねっ。」


その子はにっこりと笑った。つられて愛想笑い、でも和む。小さい子っていいな。一方の棗はむっすりと黙ったまま周りの質問を無視している。


「流架くん流架くん。右目どうしたの? 恰好いいねっ。」


女の子の手が俺の右目に伸びてきたその時、横から強く引っ張られて引き寄せられる。


「…………ルカに触んじゃねえ。」

「な……つめ?」


驚いた顔の女の子。 棗は不機嫌そうな顔を隠しもせずにいた。

ガタンッと音を立てて棗は立ち上がり、手を 引っ張られたままの俺もつられて立ち上る。


「…………気分悪い。ふける。」


そのまま廊下に手を引かれて俺はされるがままについていく。俺達が出ていった教室は静かなままだった。

確かに、右目については棗が罪悪感を抱いている、触れてはいけないところだったのかもしれない。




俺はお前を縛りたくないよ。




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