□最終話
2ページ/13ページ






歓喜に包まれた学園。
逆のシンとした、哀しみに包まれた部屋。


無効化と破壊は与えられた選択肢。






彼女の存在全てを代償にアリスを完全に消し去る。
その力を使うことで完全にアリスというものが無くなるとされていた。



それは、神により定められていた終末を覆す力。

彼女の願いの形。





光が沸き起こる。



学園全体が光に包まれた。









温かく、力強い光。












「蜜柑!」

「蜜柑ちゃん!」

「しっかりしろ!」

「早く病院に!」


誰かのそんな声を聞いたが、俺にはそれが無駄だということが一番分かっていた。
しかも病院の機能は一般病院へと移行させた。
現代の医学ではどうにもならない。


俺を安心させるように、自分に言い聞かせるように鳴海が力強く言う。


「蜜柑ちゃん、大丈夫だからね。」

『鳴海悪い。このままで。
もう手遅れ、だ。
俺はアリスを消した。その代償を払わなければならない。』


だんだんと体温が下がってきている気がする。
もう、どうにもならないんだ。
時間も無い。



別れを告げなければ。
何故かそれを穏やかに受け入れていた。

あれだけ取り乱していた直前が嘘のようだ。







さあ、鳴海からいくか。


『…………最初は、なんだこの変態……って思ってた。』

「いいよ。無理しなくて。
今話さなくていいから!」


鳴海が泣きそうになりながら叫ぶ。
こんな顔、初め見たなーなんて思った。


『だがずっと、俺を見守ってくれて。』

「ずっと見守ってるから。
これからも一緒に先輩と暮らすんだよね。」


それは心残りの一つ。
もう、叶わない願い。


『鳴海、ごめん…な。』

「何で!
大丈夫だって言ったじゃないか!」

『ああ。俺は大丈夫、だ。
だからアリスの無くなった世界を、頼むよ。』


鳴海が悲痛な面持ちのまま顔を下に向けた。
聞きたくない、とでも言うように。


『すくい、たかった。
このどうしようもない壊れた世界を。
守りたかったんだ皆を。
だいすきだった。』

「っこれじゃあアリスが無くなっても救われない!
僕は何の、ために。」


鳴海が俺の手を痛いぐらいに握った。
痛い、な。

鳴海はもっと痛いね。



『アリスの無くなった世界は混乱する。
家に、帰れない子供も出てくるだろう。
皆を正しく導いてくれないか。
鳴海にしか、頼めない。』

「それが君の、願いなら……。」

『……ありがとう、鳴海。』



そっと手を放した。





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ