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□第69話
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「蜜柑ちゃん、初校長がこちらを探っているらしい。
計画についても……。」
俺は暗い部屋の中、静かに窓辺に座っている。
月が綺麗だな。
ああ眠い。
鳴海はそんな俺に気にせず、独り言のように呟く。
「彼の盗みのアリスに対する反応は異常だ。」
『…………そうか。』
「僕はね、校長が柚香先輩を追う理由は彼女が何かを盗み、彼はそれを取り返したいからだと思い込んでたんだ。
だけど蜜柑ちゃんの盗みのアリスに反応している。」
鳴海はふう、と一区切りした。
どこか遠くを見るようで、昔を思い出しているのかもしれない。
何があったのかこいつなりに色々と考えていただろう。
少ない情報の中で。
「事実は逆だったんじゃないかと思ったんだ。
先輩は盗んだのではなく校長の中に何かのアリスを入れて、そのことで恨まれているのだとしたら……。
蜜柑ちゃんは、驚かないんだね。」
俺は鳴海と視線を合わせた。
知っていたから。
俺は見たのだから。
『……知っていたからな。』
「蜜柑ちゃんは何でも知っているんだね。僕には……それが時々恐ろしく感じるよ。
不安になる。先輩のように置いていかれそうで。」
『全てを知っている訳ではないさ。知りすぎた情報は時に残酷だ。
まあ、他人よりは真実に近いだろうがな。』
「今までのことも、計画についてもどうやってその事を知ったんだい?」
沈黙。
余り深入りはするなよ、鳴海。
『鳴海。
知らなくていい事もあるんだよ。
計画は俺がやるんだ、心配するな。』
ああ、俺はなんて酷い。
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