□最終話
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とあるテレビ番組での一コマ。




レインは指示を無視して、カメラに向かって誰かに語りかけていた。

別れた日からずっと、レインはこの日が来ることを分かっていた。




「忘れないで下さい。
今皆さんが大切な人と一緒に居られる幸せを。
その幸せが誰かの犠牲の元に成り立っていることを。

止められるものならあの人を止めたかった。」

「生放送中だぞっ!どうなってんだ。」


ざわめくスタッフやギャラリー。


「急いで止めましょうか!?
至急何か別の映像を……え?」


慌てて他の映像を流すか迷っていたスタッフは止められた。
疑問に思い動きを止める。
その場に居る全員がその動きを見守っていた。


「このまま流せ。」

「っしかし!」

「これは、歴史的な瞬間かもしれない。」

「どういう………。」

「いや…………ただの、長年この業界に携わってきた勘だ。」










「あなたに、大切なひとはいますか?」



透き通ったレインの声が響き渡る。


真剣な瞳に。

強い想いに。

その雰囲気に。



辺りは呑まれた。




「もし、あなたの犠牲で世界が救われるなら。
大切な人の笑顔を守れるなら。
あなたはその時どうしますか?」


レインはゆっくりと語りかける。
穏やかな口調で。

辺りが、照明を増やした訳では無いのに明るくなっていく。


「僕はそんなのくそ食らえだと、思ってしまうかもしれない。」


レインはふふ、と笑った。
その振動でこぼれ落ちた涙。


「だけど、それをあなたが選んだのなら、僕はそれを止められない。
だから……。


ありがとう。僕を救ってくれて。
あなたが犠牲になるぐらいなら世界が滅んでも、僕は受け入れるのに…………。」


光が、出現した。
沸き上がる光に周囲が騒然とする。
レインの立つ中央を除いて。


神聖な雰囲気に誰もが徐々にレインの姿に釘付けになっていく。


「僕はあなたが、大好きでした。」


あまりに真剣な彼の表情に押されるようにカメラは回り続けたまま。



「僕が君に贈る最後の歌……―――」




その瞬間、その場の光が弾けた。

ゆっくりと降り注ぐ暖かな光。

レインはその光積もる中心で、彼女の姿を目蓋の裏に浮かべた。






「た……大変ですっ大ニュースです!
アリスが、消えました!」









アリスの消滅。
それは世界に激震をもたらした。

光の収束と共に人々は気付く。
自分達の自由に。
あるべき姿に。




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