頂き物小説

□星に願いを…
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各自の階級に合った食事を友達と食べ終わった後。

そのまま少しの間、たわいもない話に花を咲かせる。

蜜柑と蛍の2人も例外ではない。

食事が終わり、今日の出来事について話している。

それを遮り、食事後恒例の配達物を寮母ロボットが運んでくる。



「…サーン、ミカンサーン、…」



呼ばれていく名前の中に自分の名前を聞きつけて、蜜柑が郵便を受け取った。

蜜柑が受け取ったのは、灰色の封筒。

どこか、嫌な感じがした…。



++++++++++++++++++++++++



暖かい春の日差しが教室に入り込み、眠気を招き入れるが

それを受け取って眠る勇者は居ない。

何しろ現在の授業は数学。

眠れば恐ろしい雷が飛んでくる。

いつもなら、あくびの1つでもして、眠たいなぁとぼやいている蜜柑は

どこか緊張した顔をして、様子がおかしい。



どうしたんだ…?コイツ



いつも隣に座り、たいていの時間を蜜柑と過ごす棗はいち早く気付く。

だがさっぱり原因が分からない。

変わったことと言えば、昨日は珍しく蜜柑に郵便が届いただけ。

そのときも特に変化は無かった。

授業も終わる5分前というところになると、蜜柑が俯いた。

膝の上に置いてあるこぶしは、力の入れすぎで肌が白く染まっている。

俯いた横顔は、おろした長い髪に隠されて見えない。

ふと、透明なそれは手の甲にぽとりと落ちた。

零れたのはたった一滴だけで、あとはもう無かった。

次に彼女が顔を上げた時、瞳には強い意志がこもっていた。



蜜柑…?



心の声が届いたのか、急にこちらに顔を向ける。

睨みつけるように、どこか怯えた表情だった。

“ごめん”その言葉が聞こえてくるようだった。

ゆっくりと、スローモーションのように蜜柑のか細い腕が棗に向かって伸びる。

棗はその姿から目が離せなくなっていた。

一瞬でも目をそらすのは無理で、金縛りを受けたような感覚。

暖かい手のひらが頬を優しく撫で、離れた。

蜜柑のもう片方の手には、紅い石。

自身の瞳と同じ色のそれに、目を見開いた。



「お前、何してっ……!」



切磋に石を持つその腕を掴もうとしたが、叶わず。

手は空を切った。

蜜柑が席を立ったのだ。



「何をしている、佐倉、日向」



いつの間にか、神野が2人の方に鋭い目を向け、問いつめる。

蜜柑の手に持つ石に気付き、驚きの表情をあらわにする。



「佐倉、その手にある物は何だ?」

「……日向棗のアリス石です」



蜜柑の放った一言に、クラスがざわめく。



「…お前は、自分が何をしたか分かっているのか?」



他者のアリスを石という形にして盗み出すアリス。

学園の中でもとても珍しい部類に入る。

だがこのアリスは、学園の中で言えばタブーのアリスだ。

それを使うことは、あることを意味する。



後ろのドアが開く音がして、闇の色が姿を現す。

風紀隊の連絡により到着した彼は、いつも不気味だ。



「・・・佐倉蜜柑、お前を危険生徒として本部へ連れて行く」

「ふざけ・・・」

「はい、分かりました」



怒気を孕んだ瞳をペルソナに突きつけ、反論した声は遮られた。

庇っている蜜柑の声によって・・・。

蜜柑はすでにペルソナの目の前まで歩き、背を向けている。

それを止めようと、歩き出そうとした。



「近づいて来んといて」



はっきり聞こえた拒絶と作られた炎の壁。

愛している人から告げられた、1番聞きたくない一言。

目の前にあるのは熱い炎の壁。

自分の能力で作られたそれは、今となっては彼女と自身を別つものでしかない。

そしてそれを操っているのは、他でもない蜜柑。

これでは近づくことさえできない。



「棗・・・太陽と月は、どちらかが沈んだら、もう一方は昇るんよ。知ってた?」

「何言ってんだよ、蜜柑・・・行くなっ!」

「・・・だから、さよなら」





最後に見たお前は、笑っていた。

いつもより少し大人びた顔で。

それ以降、お前の姿を見ることは無かった。

どこを探しても、いない。



お前がくれた自由は、自由じゃない。

2人じゃないと意味がない。片方だけじゃ、駄目だったんだ。

お前が俺の代わりに闇夜の月となるのなら、俺はその近くにいる星になる。

だから、戻ってきてくれ・・・。



+++++++++++++++++++++++++++





Dear.code様

棗×蜜柑でシリアスな感じをがんばって書いてみました。

いかがでしょうか・・・?

最初の手紙はもちろん初等部校長からの最終宣告です。

棗を救いたくて蜜柑はわざとアリスを盗み、校長のもとへ行く・・・。

という感じです。

気に入っていただけると嬉しいです。

今後とも、宜しくお付き合いいただきたいです。

でわ、失礼します。 

                From.胡蝶
 

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