戦わない海兵
□書類整理中
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ここはマリンフォードの海軍本部、その大将の部屋の前。
バンッ
「こんこん、しつれーしやす 大将います?」
いきなり大将の執務室の扉を開いて現れたのは一人の海兵。
「いやいや、先にドア開けちゃダメじゃない それに口で"こんこん"とか言っても意味ないし」
その海兵に注意を促すのは、"だらけきった正義"をモットーとする大将青雉ことクザンだ。
その声のする方へと目を向けた海兵はきょとんと驚いたような表情を見せた。
「あれ?大将いたんだ 珍し」
「君、俺がいるかどうか聞いたよね?」
部下とは思えない口を利くがこの海兵の場合は例外となっている。
海兵の失礼な物言いに半目になるクザンだが、海兵の言うことも最もであった。なんせ、大将にもかかわらずよくサボるのだ。
じとっとした視線を無視し、クザンに話しかける海兵。
「何やってんですか?」
「見た通り、デスクワークだよ」
確かにクザンの目の前の机には書類の山が積まれていた。
「………大将、デスクワークできるんッスね」
普段はサボっていて執務室にいることが少ないので、クザンが書類と格闘する姿は稀なのである。
「失礼な!これ終わらせなきゃ、センゴクさんに青チャリ没収されるからな」
青チャリとはクザンが本部を抜け出す際に用いられる自転車のことだ。これがないと、もう勝手に一人で抜け出すことも出来ないだろう。
「ハッ、ざまぁ」
「あれ?おれ上司だよね?」
もう一度言っておくが、このクザンという男は普段から上司らしからぬ行動をしているのだ。仕事を回される部下にとっては敬う対象ではないのだろう。
そして、この海兵も例外なくクザンの仕事を回されている者の内の一人であった。
「そんなお仕事熱心な大将青雉にステキなプレゼントですー」
「何?差し入れ持ってきたの?気が利くじゃない」
海兵は笑顔で持っていた大きな紙袋を差し出した。
「はい、どうぞ」
「これって…………」
先に述べておくが、クザン自身に迷惑をかけられている海兵がその当人に気を配ったりできるほど、この海兵は寛大ではない。
袋に入れられていたのは……………
「明日提出の書類ッス」
「う…………嘘だろォォオオオ!!!」
真っ昼間の海軍本部にクザンの悲壮な叫びが響いた。