求めたものは

□3章
1ページ/3ページ


我が家を離れたその足で私達は車で空港へと向かった

こんな時間にも関わらず登校している生徒を見かけて不良だなと思いつつも

学校を長い間サボってエジプトくんだりまで向かう自分達と比べれば余程真面目かと笑いが漏れる

小さく笑う私を見る視線を感じて振り向けば、慌てたように逸らされた

そう言えば彼とはまだ殆ど言葉を交わしていないと思いつつ話すこともないので窓の外へと視線を移した


…何の因果か、空港について渡されたチケットはその彼…アヴドゥルの隣であった

別に構わないが会話がないというのも気まずいのではなかろうかと少し思った

「君は…いつからスタンドを出せるようになったんだ?」

座席について早々にそう聞かれた

「初めて力を使ったのは小学生くらいの時ですけど
もしかしたらもっと前から持っていたかも知れません」

「そうか…では君は生まれついてのスタンド使いということか」

そうなりますかね、と軽く目を伏せて答えた

「では…出したきっかけはあるのか?」

「…その頃の友達が怪我をした現場に居て、辛そうだったから、ですかね」

ぴくり、と前の座席に座った承太郎が反応した気がした

「私は今まで様々なスタンド使いを見てきたが…治す力を持ったスタンドは本当に珍しい
スタンドというのは本体の精神を表す、君はきっと、優しい人間なんだろう」

「そんなことは…」

ありませんよ、と言葉尻が掠れる

精神を表すというなら私の精神はなんて醜い姿をしているんだろう

だから承太郎にも見せたくはなかったというのに

未だ外していなかったフードをまた深く被る

「…そうだ、花京院、ちょっと手をこちらに出してくれないかな」

「え?こうかい…?」

斜め前の席に座った花京院に声をかけると座席の隙間から手を差し出された

その手に触れるとびくっと反応され笑いが漏れる

「そんなにびくびくしないで、治すだけだから」

「ご、ごめん…」

花京院の手に触れたまま分身を呼び出すと能力を発動させた

するとすぐに額と体のあちこちに鈍い痛みが走る

「…こんなものかな」

「…すごい、本当に治ってしまった」

既に血が止まった怪我だったため、再処置せずに済んだのは幸いだった

ありがとう、はにかんだような声音でそう礼を言われ一瞬驚いた

ほとんど人と交流をして来なかったせいか礼を言われるのは久しぶりな気がした

「…大したことはしてないよ、また何かあったら言ってくれれば治すし」

「ああ、そうするよ」

ズキズキとした痛みに無視をして、座席に寄りかかる

「アヴドゥルさん、どこか怪我は?」

「いや、私は大丈夫だ」

残りの二人にも同様の質問をするがどちらも問題ないとのこと

…すぐに怪我をすることにはなるのだけれど、ね




_
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ