求めたものは

□7章
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「ん…」

…朝か

大きく伸びをして起き上がるといつの間にか毛布が掛けられていた

花京院が掛けてくれたものだろう、隣のベットを見ると彼はまだ眠っていた

思わずまじまじと見つめてしまう

1つ1つのパーツが整っていてよく見なくてもかなりの美形だ

やや大きめの口がアクセントになってその美しい顔立ちを引き立たせている

あの寡黙な幼馴染も美形ではあるがタイプが違い、
花京院が美人系で彼はワイルド系というのが相応しいだろう

顔にかかった特徴的な前髪を指で退けてやると身じろぎをした

起こしてしまったかと思ったが寝返りを打っただけのようでほっと息をつく

軽く髪を整え、昨日ポルナレフに買ってもらったパーカーを羽織り、フードを被る

やはり被っていたほうが落ち着くな…

ベットの方から呻くような声が聞こえ、そちらに目を移すと花京院が目を覚ましたようだった

「ぅん……涼…?」

「おはよう花京院、毛布ありがとう」

そういえば同室だったね、と寝起きのへにゃりとした笑顔で言う彼は幼く見えた

「…よだれの跡がついてる」

「えっ、うわ、恥ずかしい」

顔を赤くして口の周りをゴシゴシと拭く彼に笑顔を向ける

「…冗談」

「な、なんだ…」

からかうなよ、と少し怒ったような声音で言う彼にごめん、と軽く謝る

僅かに二人の間に沈黙が流れ、そして同時に吹き出した

「っあははは、涼も冗談を言うんだね」

「私だって冗談くらい言うよ、失礼な」

むっとしたように言うと更に彼の笑いが止まらなくなる

「っふふふ、はー…可笑しい」

「…何?嬉しそうにして」

笑いが収まってからもニコニコとしている彼に問う

「なんかこういう普通の友達みたいなやり取りが楽しくてさ」

「ああそういうこと…」

ハイエロファントグリーン以外に友達が居なかったんだったか…

「…これからいくらでも出来るよ」

「…うん、そうだね」

…ちょっと恥ずかしいことを言ってしまった気がするが気にしない事にする

チケットを買いに行くのは午後のため、午前中は少し暇だ

「朝ご飯食べに行こうか」

「あ、ちょっと待って、」

身支度をするという彼に廊下で待っていると声をかけ部屋を出る

…と同じタイミングでのっそりと学生服を着た巨体が隣の部屋から出てきた

「「あ」」

声が重なる

「…おはよう」

「おう」

エスカレーターの方へ向かって行く彼の背中に声をかける

「あの、」

「…なんだ」

足を止めて振り返る姿も絵になっている

「昨日は、ありがとう、…色々と」

花京院から聞いたところによると部屋まで運んでくれたのも承太郎だったそうで

ここ数年接触を避けていた身としては親切にされて少し気後れしてしまう

「…気にすんな」

ガチャッ

「お待たせ、…あれ、承太郎?」

そのタイミングで現れる花京院

「丁度よかった、君も一緒に下まで行こう」

勝手にしろ、と彼は背を向け先を歩いて行く承太郎

待ってくれよ、と追いかけて横に並ぶ花京院

なんとなく、私が混ざってはいけない気がしてしまう

追いかけてこない私を見て花京院が訝しむ

「涼?どうかしたのかい?」

「…なんでもない」

小走りして二人に追いつくと花京院はまた前を向いて歩きはじめた

…並んで歩くことは出来ないから、せめて、一歩後ろから付いて行くことを許して欲しい、
なんて、心の中で自嘲気味に笑った




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