求めたものは

□12章
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「ぐ…」

身じろぎをするとさらりとしたシーツに頬が擦れる感触がした

…どうやらまだ私は生きているらしい

目を開くとロウソクの明かりに照らされた大きな背中が見えた

「DIO…?」

「…目覚めたか」

その背中の主は振り向いてこちらに手を伸ばした

今度こそ殺されるのかと思い身を竦ませるが、意外にもその手は優しく頬に触れてきた

ヒヤリした体温が頬を撫ぜる、顔を見上げるがその表情は読み取れない

「…殺さなかったんだ」

「殺してしまえば人質の意味が無くなるだろう」

ギシリ

ベットを軋ませ私に顔を近づけてくる

そして紅い瞳の悪魔は囁いた

「涼…私のものになれ」

「遠慮するわ」

近距離にある美しい瞳を見つめて囁き返す

「…私を手に入れても貴方の飢えは満たされない」

「……」

悪魔は何も答えない

私はそっと手を伸ばし、その頬に触れた

「…寂しい人だ、その飢えを満たすために奪うことしか知らない」

体温のない頬に手を添える

「幼い頃奪われ続けたせいでそれしか知らない」

「…ッ」

私の手を振り払って離れていく

「…出て行け」

「…ええ」

ベットから起き上がり扉へと向かう

扉を引いて、振り返らないまま言った

「…おやすみなさい、DIO」

返事は、なかった






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