求めたものは

□???
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…気づけば私の身体は宙に浮いていた


眼下には太陽に照らされたエジプトの町並みが広がっている


遥か下方、はっきりと見えたのは路地裏から運びだされるボロボロの小さな身体


…私だ



私は死んで、魂だけが漂っているのだ


私の身体を囲んで慟哭する仲間達、


声は聞こえないけれど、私のために、泣いている


…誰一人欠けずに、この朝を迎えられた


間違いなく、ハッピーエンドのはずだ


どうして、貴方達が悲しむの…?


皆が生きて、それぞれの場所に帰れるというのに…



「本当に、そう思うのかい?」



不意に後ろから声が聞こえた


振り向くといつの間にか景色は変わり、辺りは闇に包まれていた


声をかけてきた人を見る


癖のある黒髪、逞しい肉体、


そして…その優しいエメラルド



「…初めまして、僕は、ジョナサン・ジョースター」


「貴方が、…」



全ての始まり、DIO…ディオと運命を共にした、黄金の精神を持った紳士



「…よく、頑張ったね」

「…ッ…はいッ…」


優しく頭を撫でられて、涙が溢れ出る



「彼も、来ているよ」

「彼…?」



ジョナサンが示す先には…



「ディオ…」

「…フン、来たか」



腕を組んで機嫌悪げに佇む彼は100年前の姿をしていた



「…結局、死後も一緒に行くことになってしまったみたいね」

「貴様が、このディオと、死後も一緒に?…ふざけるな、後ろを見てみろ」



言われた通り振り返るとそこには病院らしき白い建物が見えた


その窓から見えるベットに寝かされた患者は…



「あれは…私?」

「…貴様の身体はまだ死んではいない、彼処で眠ったままだ」

「承太郎や、色んな人が、君に死んで欲しくないって、頑張って、君の身体は生きている」



私に生きて、欲しい…



「でも、私、あんな、どんな顔して、会えばいいのか、」

「ごちゃごちゃうるさいんだよこの人間風情が!」



ディオに怒鳴られびく、と身を竦める


頭を掴まれ、ある方向を向かされる



「この道が見えるか」

「道なんて、どこにも…」



向けられた方向には虚空のみが広がっている


今度は先程まで見ていた病院に向かされる



「見えるか」

「…うん、光る、道が……」



最後に、ディオの方を向かされる



「貴様はまだこのディオと来るにはふさわしくない

…精々何十年と生きて、人間風情なりに成長してから来るがいい」

「…つまりはまだ君に死んで欲しくないってことさ、そうだよね、ディオ」



きっさまぁ!とディオがジョナサンに食って掛かっていく


ジョナサンは微笑んでいた表情を引き締め、私を見て、言った



「…君は、ディオに大切なものを与えてくれた、僕はとても感謝しているよ」

「そんな、私は何も…」



ディオはそっぽを向いて黙りこんでいる



「いいや、君と過ごしたこの数十日、彼はとても満たされていた、
…間違いなく、君のおかげだよ」

「………」



私はディオを見つめる



「…不愉快だ、さっさとどこへでも行くがいい」

「ディオ!最後だってのに君ってやつは…!」



ディオはこちらを向かない



「…貴様は屈辱にも、このディオに『与えた』のだ、貴様も散々その屈辱を味わうがいい」

「…涼、君と話せてよかった、さぁ、行くんだ」



ジョナサンに背中を押され、光る道に足を踏み出す


……ああ、涙が、止まらない…





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