ズレる日常、重なる非日常

□5章
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はーるばる、来たぜシンガポールー
ようやく揺れない地面に足が付いたなー

大きく背伸びをする、…うーん、俺の右腕が疼くぜい

急に警笛が聞こえそちらを向くと、警官がこちらに向かって来ていた

「こらッ!貴様ッ!お前、お前だよ」

私はこの時点で察してしまい笑いを堪える

警官はポルナレフの荷物を指さして言った

「貴様ッ!ゴミを捨てたな!罰金500シンガポールドルを課する!」

「…?ゴミ……なんのことだ?」

やばいやばいやばい大笑いしそう
プルプルしながら花京院の後ろに隠れる

「俺には!自分の荷物の他には!なーんにも見えねーけどーっ
ゴミってどれか…教えてもらえませんかね!」

「え!?」

ぶふっ、ついに堪えきれずに吹き出してしまった

「どこにゴミが落ちてんのよォ!あんた!」

「ええっ!?こ、これは失礼!」

警官はそそくさと立ち去り、残った皆は完全に大爆笑である

その中に混じる私以外の女の子の声

いまだに付いて来る理由を聞けば、お父さんと合流するのは5日後なのだという

「お金もないのだろうし、仕方ない、ホテル代を面倒見てやろう」

「縁、あの子と仲が良かったろう、連れてきてくれ」

「はーい」

段差に座った少女に少し近寄って話しかける

「ねえ、私達と一緒に来ない?外国で女の子1人でいるよりは安全だと思うし」

それに…私は小声で付け加える

「…承太郎とももう少し一緒にいられるよ?」

「…!」

ふっふっふ…承太郎への視線、見逃してないわよー

「そ、そんなに言うなら一緒に行ってやろうかな!」

「ふふ、ありがとう」

振り返ってジョセフさんに向かって親指を立てる
ジョセフさんもウインクを返してくれた


ホテルまで向かう途中、先程のことがよほど気に触ったのかポルナレフは未だに不機嫌だった

少女と一緒に最後尾を歩きつつ、前を歩くポルナレフの後ろ姿を見る

「…あ」

「?」

道端に風船のような実を付けた植物を見つける

辺りをそっと伺って、乾いた茶色い実を1つ拝借する

「さあ、ここで君に男性の機嫌を直すテクニックを1つ教えてしんぜよう」

いたずらっぽく笑ってポルナレフに駆け寄る

「ポルナレフ」

「…なんだよ」

口角が下がってますよお兄さん

「これ、知ってる?」

「なんだ…?何かの実か?」

先程摘んできたそれを見せながら言う

「これね、フウセンカズラっていう植物の実なの」

「ほーん…」

うーん反応鈍いなー

「でね、中に種が入ってるんだけど…よく見てみて」

実を破ると中から種が数粒転がり出てきた

その白黒の種を1つポルナレフの手に乗せる

「…!お!ハート模様だな」

「うん、ちょっと可愛いでしょ?」

残りの種も手渡した

「あげる、だから…機嫌直して?」

ね?上目遣いに困ったような笑顔を浮かべる

「しょ、しょーがねーな…」

「えへ、ありがとう」

頬をポリポリと掻きながら目を逸らした

計 画 通 り

それだけー、と言って少女のところまで戻る

「女の子はこういうテクニックも身に付けないとねーふふん」

「…アンタ、良い性格してんなー」

まあね、と一転して上機嫌になったポルナレフの背中を見つめて答えた

じわじわと痛む右腕には無視をして…




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