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□チョコより甘い
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俺の部活の相棒でもあり、恋人でもある室ちん─もとい氷室辰也はいつも柔和な笑みを絶やさず優しい性格なのですごくモテる。
女子ばかりか度々男子からも告白されているようだ。
そんな奴らに知ってほしい。室ちんがあの笑顔の裏側にどれだけの思いを隠しているか。試合のときは若干めんどくさいのだ。
…ってそんな話をしたいんじゃない。室ちんがモテる話だ。
今日は2月14日。
バレンタインデーである。
チョコを貰えない奴らが菓子会社の陰謀だ何だと騒ぐけど俺としてはチョコいっぱい貰えるから大好きな日だ。帝光時代は黄瀬ちんが段ボールで貰ってたからお裾分けして貰ったりしてた。

「アツシ、おはよう」
「あ、室ちんおはよ〜」
「そうだ、はいこれ」

室ちんは鞄の中から綺麗にラッピングされたピンクの箱を取り出した。

「何、これ?」

中身は分かっていたがあえて聞くと室ちんが柔らかく笑う。
その笑顔がダメなんだってば。可愛すぎる。

「バレンタインのチョコだよ。日本じゃ好きな人にあげるんだろ?アメリカは花とかだからアツシは日本人で良かったな」
「ああ〜、うん。ありがと」
「タイガと一緒に作ったから味は大丈夫だと思うけど、口に合わなかったらごめんな」
「は…?火神…?」

さっきの甘い気持ちから一気に怒りにも似た感情がこみ上げてくる。

「あ…!別に、タイガ料理上手いから、ちょっと手伝ってもらっただけで…!」

俺の顔を見て室ちんが弁解するように言う。

「…ちゃんと、アツシのことを考えて作ったんだ…」

あーあ、今度はしゅんとしちゃって…。ほんと可愛いなぁ室ちんは。

「分かってるよ…。でもあんまり俺のいないとこで他の奴と仲良くしないで」
「…努力するよ」
「チョコ、室ちんも一緒に食べよ」
「いいのか?アツシが食べる分減っちゃうぞ?」
「いーの!」
「…じゃあ、放課後な」

──昼休み

「むむむ紫原くん!ちょっといいかな!」

室ちんに会いに行こうとしていたら呼び止められた。

「何?」
「ここじゃなんだから、中庭に行こ!」
「えー…、めんどくさ…」
「お願い!お菓子あげるから!」
「行く!」

お菓子につられ中庭に来てみると他にも女子が10人くらいいた。

「紫原くん…。これ!」

さっき俺を呼び止めた女子がずいっと腕を伸ばす。手にはラッピングされた箱があった。

「チョコ…?」
「うん…。あの、氷室先輩に渡してほしいの…」

そう言うと待ってましたとばかりに他の女子も室ちんに渡してくれと様々な箱を突き出してくる。
でもそんな女子たちに俺は嫉妬心を覚えた。
室ちんは俺のものなのに。自分でチョコも渡せないような奴らに室ちんは渡さない。視界に入れて欲しくもない。

「いやだね」
「…そこをなんとか!」
「いーやーだ」
「っ…!そうだ!紫原くんにもあるんだよ。氷室先輩に渡してくれたらあげるから!」

普段のお菓子ばかり食べてる生活と中庭に連れてこようとしたときの俺の反応で把握したのか、またお菓子でつってくる。
でも、今回ばかりはいらないな。

「お菓子いらない。だから室ちんに渡さなくていいよね」
「どうして!?紫原くん甘いもの好きでしょ!?」

俺は口端に笑みをこぼしながら言ってやった。

「だって室ちんの方が甘いから」

女子が呆けている間に俺は室ちんのいる教室を目指した。
甘い甘い室ちん。今にでも味わいたい。
どんなお菓子より甘いんだよ室ちんは。
誰にも渡したくない。
俺だけが知ってればいいんだ。
そう思いながら少し歩くスピードをあげた。


おわり



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